仏マクロン大統領、来春に大統領選控え歴史外交急ぐ 責任認めても謝罪せぬ姿勢に仏領ポリネシアなど反発

2021年8月1日 19時39分
 【パリ=谷悠己】大統領選を来年に控えるフランスのマクロン大統領が、過去に複雑な経緯をたどった国や地域との関係改善を急ピッチで進めている。前回の大統領選で掲げた公約「歴史と向き合う外交」の総仕上げに入った形だが、謝罪を回避する姿勢には批判も付きまとっている。

フランス領ポリネシアのタヒチ島で7月27日、演説するマクロン大統領=AP

 「フランスは仏領ポリネシアに、核実験を繰り返してきたという借りがある」
。マクロン氏は東京五輪の開会式出席後に同地域を訪問し、7月27日にタヒチ島でこう演説した。
 仏領ポリネシアは南太平洋に散在する約120の島と環礁から成り、人口は約28万人。1842年にタヒチ島がフランスの保護領に、19世紀後半に他の島が併合された。1946年からフランスの海外領土になった。
 フランスは同地域で、ドゴール大統領当時の66年からシラク大統領時代の96年まで193回の核実験を実施。74年までは大気圏で実験を行い、降下した放射性物質による住民の深刻な健康被害が指摘されている。

◆地元被害者団体は批判「何の進展もない」

 マクロン氏は過去の政権が沈黙し続けてきたことに触れた上で、実験情報の開示や補償に向けた健康調査の加速を約束したが、謝罪は口にしなかった。来訪前に謝罪を求める街頭デモを行っていた地元被害者団体の代表はAFP通信に対し「何の進展もない演説だった」と批判した。
 責任を認めつつ謝罪を避ける論法は、民族大虐殺へのフランスの関与が指摘されたアフリカ中部ルワンダでの5月の演説に共通する。前回大統領選中には歴史と向き合う姿勢を強調したマクロン氏だが、最近は謝罪への抵抗感が強い右派支持層を意識しているとみられる。

◆正念場は北アフリカ・アルジェリア

 マクロン流歴史外交の正念場は、旧植民地の中で特に反仏感情が強い北アフリカのアルジェリアとの関係だ。独立戦争中の仏軍の不法行為を認めた有識者委員会による報告書を携え、カステックス首相が4月に同国を訪問する計画は直前で中止になった。報告書を巡り両国の認識で調整が付かなかったとみられている。
 独立戦争終結から60年の節目を迎える来年3月は仏大統領選の1カ月前。それまでに同国との関係改善が果たせるのか、マクロン氏の手腕に注目が集まる。

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