頼みの原発 試算コロコロ 東電の今後10年の再建計画 本当に可能?

2021年8月2日 06時00分
 東京電力は経営再建で、なお原発に頼る。新たにまとめた今後10年の経営方針「第四次総合特別事業計画」では、原発のコスト(費用)面の利点を半減させつつ、不祥事で運転禁止とされた柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を来年に見込んだ。未曽有の被害を出した福島第一原発事故から10年余。事故処理と被災者への賠償で膨大な費用を背負い、利益確保を迫られるが、実現は見通せない。(小野沢健太)

◆東電社長「見通しを言える状況ではないが…」

 「見通しを言える状況ではないが、原子力の活用は重要だ」。東電の小早川智明社長は7月21日、オンライン会見で柏崎刈羽原発の再稼働を問われ、そう答えた。
 柏崎刈羽は経営再建の柱の一つ。ところが、今年になってテロ対策設備の不備が相次いで発覚し、原子力規制委員会から「運転禁止」命令が出された。改善が認められない限り、再稼働はできない状況だ。
 立地自治体の柏崎市からは再稼働の条件に1~5号機のいずれかの廃炉を求められているが、小早川氏は「どれかをあきらめることを意思決定する段階ではない」と取り合わなかった。
 その上、東電は「収支予測上の仮定」として、7号機が早くて2022年10月、6号機は24年4月、1~5号機のうち1基が28年に再稼働する想定を計画に入れた。最大で全7基の再稼働を見込んだ4年前の前回計画より後退したものの、「運転コストが低い」と原発重視の姿勢を変えない。

◆原発効果900億円?500億円?

 原発のコスト試算の根拠は極めてあいまいだ。東電は前回計画で1基の稼働で最大900億円のコスト削減効果があると試算。19年には900億~1100億円のコスト減になると引き上げた。だが今回は一転、500億円と効果が半減した。
 東電によると、従来試算では、停止中の原発の代わりとして、燃料費が安い火力に加えて、より割高の風力など再生可能エネルギーを使うことを前提にしていた。この場合、原発を動かす方が利益が多く出る。
 ただ東電は福島原発事故以降、原発の代わりをほぼ火力で補ってきた。今回は実態に合わせて代替電源を全て火力として計算すると、原発を動かしても利益幅は大きくならなかった。
 ここまで数値が変わる試算は、信用できるか疑問がある。東電の広報担当者に燃料費などの根拠を聞くと「個別の契約にかかわるので差し控える」。試算が妥当なのか検証できない。

◆福島第一の事故処理や賠償で16兆円必要

 東電は再建計画で、11年1月に着工して福島事故後に中断している東通原発(青森県)の工事再開を目指すことも明記した。他社との共同事業化を模索するが、めどが立たない。
 後押しする政府は脱炭素社会の推進を掲げており、発電時に温室効果ガスを排出しない原発の新増設を推進してもおかしくない。だが、7月に示された政策指針であるエネルギー基本計画の改定素案に新増設を盛り込まず、その代わりに再生可能エネルギーの大幅な引き上げを打ち出した。
 東電は脱炭素に向けて3兆円を投じるが、再生エネに1兆円、残り2兆円は東通の建設準備や柏崎刈羽の対策工事の費用の他、送電網の整備費。投資方針からも原発への固執が浮かぶ。
 福島第一の事故処理や賠償に必要な約16兆円を捻出するには、30年代に年4500億円規模の利益水準に達する必要がある。だが、記録がさかのぼれる事故前の1994年度以降を見ても、目標値に達した回数はゼロ。再建計画は絵に描いた餅でしかない。

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