<社説>教育改革 近道も特効薬もない

2021年8月2日 07時03分
 教員に十年に一度の講習を義務づけた教員免許更新制が廃止される見通しだ。大混乱を招いた大学入学共通テストへの英語民間試験と記述式問題導入についても、萩生田光一文部科学相は七月末、断念すると表明した。即効性を求める政治主導の「改革」と、挫折の繰り返しは終わりにしたい。
 教員免許更新制と大学入試改革のどちらも、安倍晋三政権当時の有識者会議の提言に基づいている。教育再生会議の第一次報告(二〇〇七年)に免許更新制が盛り込まれたのは、学力低下が問題とされている時期で、不適格な教員は排除することも含め、指導力向上の看板政策に位置付けられた。
 文科省の制度設計段階で、排除の色合いは薄められ、新しい知識や技能を身に付けることが目的とされたが、三十時間以上の講習は、当時から過重労働が問題となっていた教員の負担が増すことに変わりなかった。
 教員や教員経験者が免許を更新せず、失効することで現場の人手不足に拍車がかかるなど、弊害も目立つようになった。採用試験の競争倍率も下がっている。
 教職の不人気の原因は過重労働にもあるとみられている。授業の質を上げるための時間が確保できる日常の環境づくりが、地味でも指導力向上の王道だろう。
 大学入試改革は、第二次安倍政権の一三年に、教育再生実行会議が現在のセンター試験に代わる新テスト導入を提言したことが契機となった。グローバル化に対応できる人材を求める経済界の意向が強く働いた。
 英語民間試験については地域格差や経済格差、記述式は採点のばらつきなど、当初から指摘されていた懸念は払拭(ふっしょく)できず、相次いで導入見送りとなった経緯は記憶に新しい。その後、文科相の下に設置された有識者会議が七月、いずれも「実現は困難」と結論づけ、個々の大学の入試改善を促していく政策を提言していた。
 目新しく派手な改革の頓挫は、時間をかけて人を育む教育という領域で、近道も特効薬もないことを教えてくれる。提言書は、今後の入試改革の意思決定のあり方にもページを割いている。
 「理念や結論が過度に先行し、実務的な課題の解決に向けた検討が不十分にならないようにする」
 入試に限らず、肝に銘じたい教訓だ。

関連キーワード

PR情報