性別にとらわれた駄言を収集 無意識の偏見…原因は「不勉強」 早く絶滅してほしい!

2021年8月2日 07時14分
 女だから、男だから−。能力や個性を無視して性別だけで人を決め付ける言葉は、世の中にうじゃうじゃ転がっている。そんな性差別の言葉をピックアップし、絶滅を目指す本『早く絶版になってほしい #駄言(だげん)辞典』(日経BP、1540円)が出版され、反響を呼んでいる。 (出田阿生)
 「これだから女はダメなんだ」「男なのに情けない」…。『#駄言辞典』は、心を打つ「名言」の対極として、性別ステレオタイプに基づくひどい発言を「駄言」と命名した。担当編集者の小田舞子さんは「ネットで募集すると、瞬く間に千二百を超える言葉が寄せられた」と話す。同書では、「女性らしさ」「キャリア・仕事能力」「子育て」「生活能力・家事」「恋愛・結婚」「男性らしさ」に分け、四百以上の駄言を紹介した。
 高校一年の時、進路の話をした実父に「女のくせに大学行きたいなんて言うな!」と言われた四十代女性は、今も当時の悔しさをバネに生きているという。「女の子がいれたほうがおいしいから」と女性社員にお茶くみを押しつける職場の習慣もいまだに残っている。そう言われた新卒の二十代女性は「お茶の味に性別なんて関係あるか」と憤る。
 家の中に目を向ければ、共働きなのに、夫は家事・育児を「手伝うよ」とひとごと扱い。その背景には、「男は仕事、女は家庭(と仕事)」という性別役割分担意識に基づく圧倒的な負担の差がある。「子煩悩」「家庭サービス」は父親にだけ使う表現で、母親には決して言わないことからも明らかだ。

『早く絶版になってほしい #駄言辞典』より

 集まった駄言の大半は女性への言葉だが、男性も悩む。心を病んで「少し休みたい」と義父に打ち明けた男性は、「男なんだから黙って働けよ」と言い放たれた。結婚について「誰かいい人いないの?」とプライベートに踏み込まれるのは、男女共通の悩みだ。
 自尊心を傷つける言葉が並んでいるので、読んで落ち込む人がいるかもしれない。そんなときは各章のコラムや、後半にある各界著名人のインタビューがオススメ。駄言が生まれる社会的背景や、今後目指す方向を考えるきっかけになる。
 たとえば立命館アジア太平洋大学の出口治明学長は、今の日本にはびこる女性差別は「明治維新で国民国家をつくる際に男尊女卑の朱子学を取り入れた結果」と分析する。駄言が生まれる原因は「不勉強」と断言し、今後なくしていくためには歴史的、科学的な事実を勉強するべきだと説く。
 社会の急速な変化で、これまで「常識」としてまかり通ってきた無意識の差別や偏見が、社会的強者から弱者への押しつけとして「おかしい」と批判される機会が増えている。アーティストのスプツニ子!さんは「駄言はどの時代にもあったのでしょう。何かの発言に対して違和感を持つのは、社会が成長しているからこその現象、証しなのかも」と前向きにとらえる。
 私たちは駄言とどう向き合っていけばいいだろう。トランスジェンダーとして社会啓発活動を続ける杉山文野さんは「自分も偏見を持っていると認識することが大事」と当事者意識を持とうと呼び掛ける。「言ってしまったらまず謝る。考え続け、学び続ける」 

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