差別と闘った 谺さんしのぶ 草津のハンセン病「重監房資料館」に文庫開設 元原告団協議会長の蔵書1400冊

2021年8月2日 07時47分

約1400冊が並ぶ谺文庫=いずれも草津町で

 二〇一四年に八十二歳で亡くなった草津町の国立ハンセン病療養所「栗生(くりう)楽泉園」の元患者で、国に強制隔離などの責任を認めさせたハンセン病違憲国賠訴訟の全国原告団協議会長を務めた谺(こだま)雄二さんの蔵書「谺文庫」が、同園に隣接する重監房資料館に開設された。さまざまな差別や人権に関する本など約千四百冊。中には谺さんが文章に線を引いた本もあり、手に取って故人をしのび、人間形成の軌跡も実感できる。(菅原洋)
 「強制収容所ではたいていの人が、今に見ていろ、私の真価を発揮できるときがくる、と信じていた」
 第二次大戦時、ナチスがユダヤ人を大量虐殺した強制収容所を告発したフランクルの不朽の名作「夜と霧」。この言葉に、谺さんは線を引いた。谺さんが強制隔離されてきた療養所と、強制収容所を重ね合わせた心情がうかがえる。差別と闘い続けた、記者が知る生前の谺さんの人柄もにじみ出ている。
 被差別部落、戦争、沖縄、慰安婦、アイヌ、水俣病、冤罪(えんざい)、ホームレス、関東大震災時の朝鮮人虐殺と在日差別…。蔵書からは、谺さんが幅広い社会問題を踏まえた上で共闘し、活動していたと分かる。療友の著作も多く、哲学書や詩と短歌を含む文学作品もある。
 蔵書は約二千冊あり、資料館が谺さんの没後に遺志をくんで収蔵庫に保管。今春までに傷んだ本などを除き、本に引かれた線を確認するなどして整理し、レクチャー室の書架に並べ、その後に公開できるようにした。貸し出せないが、職員の了承を得て閲覧できる。

関さんの展示品を見る孫の江尻さん(左)

 資料館の黒尾和久部長(学芸員)は「本を手に取ると、谺さんと触れ合い、身近にいるように感じられる。谺さんも喜んでくれていると思う。この文庫に接し、谺さんを忘れないでほしい」と呼び掛けている。
 一方、資料館では名称の由来となり、戦前から戦後にかけて患者たちが監禁された園内の懲罰施設「重監房」をテーマにした企画展「重監房を報道した男 関喜平展」を開いている。
 故・関さんは重監房問題に注力した元全国紙記者。関連する書籍類、資料、遺品など計二十二点を展示している。関さんの孫で、栃木県の足利市立美術館の江尻潔次長(学芸員)は「私が十八の時に祖父は亡くなったが、新聞記者の仕事の大切さと、ハンセン病が当時からうつらない病気であることを教えてくれた」と述懐した。
 企画展は九月二十六日まで。入館無料。新型コロナウイルス感染防止のため、入館は九人まで。原則月曜休館。

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