生活再建のめど立たず「五輪どころではない」 熱海土石流発災から3日で1カ月

2021年8月2日 12時00分

国道沿いの店舗内に入った土砂や樹木を運び出すボランティア=1日、熱海市伊豆山で

 東京五輪で日本勢のメダルラッシュが続く中、静岡県熱海市伊豆山いずさんの土石流災害は3日で発災から1カ月を迎える。被災地では1日もボランティアが泥出しに汗をにじませ、立ち入り禁止が解除された地域では被災者が自宅や店舗を片付けた。同じ伊豆半島では五輪の自転車競技が開催中だが、生活再建のめどが立たず五輪どころではないと話す被災者もいる。22人が亡くなり、5人が行方不明のままになっている被災地の今を追った。 (山中正義)

◆消えた五輪ムード

 相模湾側に位置する伊豆山の浜地区。建物の内外に堆積した、湿った粘り気の強い土砂やがれきに加え、日差しが容赦なく照り付ける。伊豆山のこの日の最高気温は29・8度。土砂からは鼻を突くような臭い。復旧作業を手伝うボランティアの額から汗が滴った。
 「想像以上。乾いたところは泥が硬く、ぬかるみは人力では数センチしかすくえない」。地元の会社員増田慎一さん(43)は土砂をスコップでかき出し、険しい表情を浮かべた。増田さんは連日の日本選手の活躍に「鼓舞される」と、1日も早い復興を願い作業を続けた。
 だが、街に五輪を祝うムードはない。JR熱海駅前の広場などに設置予定だった大会の公式フラッグは、土石流災害で飾り付けが中止になった。静岡県内で行われる自転車競技を観戦するため熱海駅で降りる客をもてなす県の都市ボランティアも取りやめとなった。

◆五輪違う世界のよう

 7月31日に立ち入り禁止が解除された地域では、店主の男性(73)が店内外の泥を水で洗い流す作業に追われていた。男性は市内のホテルで今も避難生活を送っており、水道などのライフラインが復旧するまで自宅には戻れない。東京五輪では日本勢が活躍しているが「ほとんど見ない」と話す。生活再建のめども立たないのに「そういう気持ちにはなれない」からだ。
 浜地区の町内会長・千葉誠一さん(74)も「被災者以外の人と同じ感覚で五輪を見られない。違う世界のようだ」と話した。

◆今も続くホテルでの避難生活

 大会10日目を迎えた五輪。日本は1日までに17個の金メダルを獲得し盛り上がりを見せているが、熱海市内のホテルでは同日午後6時半現在、303人が避難生活を続けている。
 公営住宅などへの入居申し込みは7月末にようやく始まったばかりだ。1日にあった公営住宅の見学会に参加した70代女性は、「生活基盤を早く整えたい」と話す。一方、50代男性は「夢のない新生活」と言葉少なだった。
 捜索現場では重機を使った活動が続いている。「これからが長丁場。被災者の間でも、家が残った人とそうでない人など格差が出てくる」。五輪の自転車競技場がある伊豆市から、約20キロ離れた被災現場で働く関係者がつぶやいた。

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