今こそ日記 下北沢に専門店 書いて自分の気持ち整理 読んで他者への想像力養う

2021年8月3日 07時11分

さまざまな時代の日記が並ぶ日記専門店「日記屋月日」=いずれも世田谷区で

 日記を書いたり読んだりする楽しさを伝える専門店「日記屋月日(つきひ)」が昨年四月、世田谷区の下北沢にオープンした。日記帳はもちろん、平安時代の「土佐日記」に関する本、著名人の日記から市井の人がコピー用紙に書いた日記まで販売している。「日記を書いてみたい」と思うようになるお店を訪ねてみた。
 小田急線下北沢駅から徒歩五分。月日は、小田急の線路跡にできた商業施設「ボーナストラック」の一角にある。店舗が入る薄灰色の外壁に書かれた「月 日( )」の文字が、白紙の日記帳を思わせる。
 木製の本棚に囲まれた店内は、温かく、落ち着いた雰囲気。本棚に並ぶのは古今東西、千差万別の日記。レストランのシェフが日々の食事を記録した日記、「アンネの日記」に代表される戦時下での人々の日常を記録した日記、新型コロナウイルスが感染拡大する中で感じた非日常を記した日記…。この店では原則、日付が記録されている文章を日記とし、現在は約五百種を扱っている。

少ない部数で個人が製本した「リトルプレス」のコーナー

 個人や団体が自ら制作し少部数で発行する「リトルプレス」のコーナーもある。手描きのイラストを表紙に、コピー用紙をピンク色の糸で綴(と)じた日記の作者は公務員の湖麻美さん(30)。ニュースを見て感じたことや歌手の星野源さんの結婚にショックを受けつつも祝福したことなど、ありのままに書き連ねている。「自分の思考や感情を書き留めるのが日記。知人だと遠慮してしまうが、第三者に読まれることで、自分の気持ちを外に出せて落ち着く」と話す。
 日記を書くと、どんないいことがあるのだろうか? 店主の内沼晋太郎さん(41)は「今は経済が目に見えて成長することがなく、低成長の中でいかに生きるかを考える時代。見えない先の未来ばかり考えるより、日記に『今日がどんな日だったのか』『何ができたのか』と、過去と現在を自分で書いて確認すると、小さな喜びを感じながら暮らしていけるのではないか」と話す。

店主の内沼晋太郎さん

 一方、誰かの日記を読むことにも“効能”はある。「書き手にも普通の日常があると知り、親近感がわき、他者への想像力が働くようになる」
 「もともと日記を書くのも読むのも好きで拠点を作りたかった」と内沼さん。大学卒業後、新刊書店「本屋B&B」の開業や出版社の経営など、本の仕事に携わる中で、日記本の出版が増えたことも追い風になった。
 だが昨年四月、緊急事態宣言の発令により、開店から数日で休業に追い込まれた。そんな中始めたのがオンラインコミュニティーの「月日会」。会員は自分の一週間の日記を、週一回配信の会報に掲載でき、メンバーと日記について語り合える。
 月日で自分の日記を販売する人もいる。フリーライターの小沼理さん(29)は、緊急事態宣言が解除されて危機感がどんどん緩んでいく昨年二月末〜八月の半年間を記録した「消毒日記」を自費出版した。小沼さんは「ツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)で感じたイエスかノーか明確にして短文で収めるという意識から解放された。日記は本当の自分の気持ちを整理できる」と話した。

ボールペンやカードなどオリジナルグッズも

 自分を見つめ直し、自分だけに向けた文章。それが日記。手書きでもパソコンでも構いません。あなたも今日から日記をつけてみてはいかがでしょうか?
<日記屋月日> 世田谷区代田2の36の12 BONUS TRACK SOHO9。営業時間は午前8時〜午後7時(短縮営業)。詳細は同店のホームページを。
 文・山下葉月/写真・池田まみ
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