<争点を行く 横浜市長選2021>(1)IR誘致 コロナ禍「局面変わった」

2021年8月3日 07時16分

横浜市がIRの誘致先としている山下ふ頭=本社ヘリ「おおづる」から

 「みんなの力でカジノのないミナト・ヨコハマをつくろう!」。横浜市が進めるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致の候補地の山下ふ頭(中区)の入り口には、港湾業者らが掲げた横断幕がある。
 二〇一七年の前回市長選で、林文子市長はIR誘致を「白紙」として三選を果たした。しかし、一九年八月、誘致する方針を表明すると、誘致に反対する市民から反発の声が巻き起こった。
 誘致の是非を問う住民投票の実施を目指した市民団体は法定数の三倍を超える約十九万三千筆を集めた。港湾業者も反対の声を上げた。しかし、市議会は今年一月、自公の反対多数で実施のための条例案を否決。市はIRの開発・運営を希望する事業者を公募し、夏にも応募した二つの事業者のうち、どちらにするか決め、来年四月に国に認定申請する予定だ。

◆経済活性の核

林氏は「横浜の将来にとって必要。経済活性化の一つの核」と訴える。しかし、林氏とともに誘致を進めてきた自民で、林氏を支援するグループは少数にとどまった。「市民の理解を得られていない」として誘致の「取りやめ」を明言した前県連会長の小此木八郎氏の支援に市議の多くが回ったからだ。
 一方、署名集めを行った市民団体も、多くのメンバーが立憲民主が推薦する元横浜市立大教授の山中竹春氏を支援するが、同じく誘致反対を掲げて出馬表明した元知事の松沢成文氏の支援に回ったメンバーもいる。賛成派、反対派とも混沌(こんとん)とした情勢になっている。
 しかし、経済活性化のためIR誘致を求める声は、新型コロナウイルスによる経済低迷で、切実さを増している。
 山下ふ頭近くの横浜中華街。新型コロナの流行が始まった昨年二月以降、客足が激減した時期があり、閉店する店も少なくない。横浜中華街発展会協同組合の高橋伸昌理事長(62)は「IRができた際に中華街にも足を運んでもらえる」と誘致に期待を寄せる。
 市は事業者の提案を基にIRへの訪問者数を年間二千百万〜三千九百万人、区域内の消費額を年間四千九百億〜六千九百億円とし、市税収入は八百六十億〜一千億円の増収を見込む。コロナにより本年度の税収が戦後最大の四百八十八億円減るとの見通しを明らかにした市にとって、提案通りなら巨額の収入となる。ただ、提案には新型コロナの影響は加味されていない。

◆時代遅れ指摘

専門家はコロナ禍で経済モデルは変わったと指摘する。
 「カジノ問題を考える大阪ネットワーク」代表の桜田照雄・阪南大教授(経営財務論)は、世界的にカジノはオンラインに移行していることをあげ「IRという集客型のビジネスモデルは、もはや時代遅れだ」と指摘。今回の市長選について「コロナにより、局面が変わっている。一人一人が熟慮して価値判断してほしい」と話す。(丸山耀平)

山下ふ頭の入り口には、誘致に反対する港湾業者らによる横断幕が掲げられている=いずれも横浜市中区で

 ◇ ◇ ◇
 三百七十八万人が暮らす全国最大の基礎自治体・横浜市。少子高齢化で税収の減少と社会保障経費の増加が見込まれる中、未曽有のコロナ禍で戦後最大の減収に直面している。市民の日々の暮らしを守り支えながら、市内経済をどう立て直すか。市長選の争点となる課題の現場を取り上げる。

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