高齢者の一票 高い「壁」 投票を支える制度を

2019年6月26日 02時00分
 要介護だったり、足腰が弱くなったりで、投票所に足を運ぶのが困難となった高齢者は少なくない。一票を投じたい思いがあるのに、投票所に行けないという理由で、有権者の権利を行使できないという状況はどうにかできないのだろうか。現行制度で、そんな人たちが投票する方法を整理した。 (三浦耕喜)
 足腰が弱った高齢者はどうやって投票したらよいだろうか。自治体によっては、無料でバスやタクシーで送迎するところも。島根県浜田市のように期日前投票の期間中、投票箱を載せた車が地域を巡回し、高齢者が投票所まで出向く負担を軽くした例もある。
 だが、投票所までのアクセスは確保できても、現行の選挙制度は「不正防止」を中心に組み立てられている。ハンディがある高齢者には、投票所まで行けてもその先にまだなお高いハードルがある場合も。
 まず、原則、自分の手で候補者名を書かねばならない「自筆主義」。海外では、投票用紙に候補者の顔写真や名前が書いてあって、チェックを入れるだけでいい国も多い。識字率が低いという事情もあるが、文字を書けなくなっても自分の意思を示すことは十分にできる。
 日本では、自分で書けない場合は代筆投票という手がある。しかし、高齢者の意思をどう確認するかにも課題がある。期日前投票でも当日投票でも、代筆するのは選挙管理委員会職員という決まりだ。これは、見ず知らずの第三者に自分の政治上の意思を明かすことになる。「投票の秘密」は民主的選挙の根幹で、それゆえ憲法一五条ではこれを侵してはならない旨を定めている。
 認知症患者の中には、家族やなじみのヘルパーになら意思を伝えられるという場合も少なくない。「この人になら秘密を知られても大丈夫だ」という安心感もある。だが、現行法では代筆に家族などは立ち会えない。
 施設や病院にいる人については、都道府県の選管が指定すれば施設内で投票できる制度はある。だが、それも施設側がどこまで手をかけるかにかかっている。
 老いに消えゆく「一票」。それに対して無策のまま、選挙の夏がやってくる。

◆“消えた有権者”200万人以上

 投票する意思がありながら、足腰が弱ったなどの理由で、参政権を行使できない人は二百万人以上-。本紙は二〇一七年四月の連載「消えた有権者」で、そう推定した。
 総務省によると、最近の選挙では七十歳代の投票率はおおむね70%。それが、八十歳以上になると40%台に急減する。同省の人口推計に基づいて、八十歳以上人口の七割と四割をそれぞれ計算したその差が、二百万人以上だ。
 さらに、厚生労働省のデータでは、外出が困難になりつつある要介護3は八十三万人、ほぼ寝たきりとなる4は七十六万人、寝たきりの5は六十万人。その三つを合計しても約二百二十万人となる。

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