最高裁、夫婦別姓認めず 海外の法律婚に注目も

2021年8月4日 07時28分
 六月下旬、最高裁大法廷が夫婦別姓を認めない民法などの規定を合憲と判断した。以後、選択的夫婦別姓を求める他の訴訟も相次いで敗訴となった。法律婚で別姓が選べないのは世界で日本だけ。日本での制度改正を待ちきれず、海外での法律婚に望みを見いだす事実婚カップルもいる。なぜなのか。当事者らに聞いた。 (砂本紅年)
 「制度が変わるのを十二年待ち続けたが、結婚できない」。名古屋市の主婦松下沙織さん(35)=仮名=は新型コロナウイルスの収束後、海外で別姓のまま法律婚することを検討している。
 十代後半に、独身女性の恋愛・結婚観を描く米国のテレビドラマにはまった。米国では妻が夫の姓にそろえることが多いが、別姓も選べることを知った。婚約者役の男性の「君次第だ。(姓は)一生ついて回る」とのせりふも心に残った。「別姓にしよう」と決意した松下さんは二十代前半で結婚を考えた時、同年代の彼と話し合い、日本で夫婦別姓が認められるまで事実婚で待つことにした。
 ただ法律上の夫婦ではないので、所得税や相続税の配偶者控除は受けられない。夫は危険を伴う仕事で、松下さんは難病を抱えている。住宅を購入したばかりで、松下さんは「どちらかが突然死ぬ可能性がある中、相続のことが一番心配」と漏らす。
 四月、米国で別姓のまま結婚した日本人夫婦が日本でも法的な夫婦であることの確認を国に求めた訴訟の判決が下された。東京地裁は戸籍への記載は認めなかったが、この婚姻は「有効」と判断。松下さんも「別姓婚のルートができた」と喜んだ。自分でも米国各州などの結婚の手続きを調べ、「条件付きだが、居住者でなくても法律婚できる州もある。コロナが収束したら海外で結婚したい」との思いを強くした。
 ただ、別姓のままでは、海外での婚姻を報告するため市区町村役場に提出する婚姻届が受理されず、戸籍に反映されない。この訴訟の原告代理人の弁護士竹下博将(ひろゆき)さん(45)は「国内では婚姻関係を公的に証明できないので、中途半端な状態に変わりない」と話す。
 国税庁によると、所得税の配偶者控除が受けられるのは法律婚の配偶者のみ。海外別姓婚の当事者が税務上の利益を得るのは現状では難しい。大きな手術など医療行為の同意も、どこまで認められるか不明だ。
 「海外で法律婚になっても、日本の社会的には千葉市や横浜市で認められている事実婚のパートナーシップ制度と大きく変わらないと受け止められるかもしれない」と竹下さん。海外別姓婚が制度面で有利なのは、夫婦の一方が死亡した後、残された方が夫婦いずれかの姓に統一した上で、報告のための婚姻届を出せば、戸籍に反映される点だ。相続の実務上も、これまで相続人である配偶者として認められてきたという。
 事実婚歴三十六年の東京在住のジャーナリスト福沢恵子さん(63)によると、夫婦別姓を求める一連の訴訟の敗訴が続き、海外別姓婚の希望者は増えている。福沢さんは「相続の心配が大きい中高齢者を含め、法律婚の証拠を少しでも残したい人にとっては海外別姓婚は意味がある」と指摘。「ただ、あくまで法改正が待ち切れない人のための苦肉の策。日本でも、グローバルスタンダードである選択的夫婦別姓の導入が必要だ」と訴える。

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