<社説>介護職員の不足 待遇改善を抜本的に

2021年8月4日 07時36分
 高齢者を介護する職員が二〇四〇年度には約七十万人不足する。そんな見通しが厚生労働省の推計で明らかになった。コロナ禍で労働環境がさらに厳しくなる中、人材を確保するには、待遇の抜本的改善などの対策が必要だ。
 厚労省の推計によると、全国の六十五歳以上の高齢者数は四〇年度に約三千九百万人に達し、全人口の三分の一超を占める。
 これらの高齢者を支える介護職員は約二百八十万人が必要となるが、一九年度の職員数は約二百十一万人にとどまる。この差を埋めるには毎年三万三千人程度ずつ職員を増やさなければならない計算だ。容易ならざる数字である。
 全職業平均の有効求人倍率はことし三月現在一・〇二倍だが、介護サービスは三・四四倍。なり手不足が顕著なことを示している。
 介護職は、人命を預かる精神的負担が大きい上に勤務時間が不規則で力仕事も多い。さらに、そうした重責や、重労働に見合う賃金水準に達していないことも、敬遠される大きな原因だろう。
 介護職の労組「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン」の調査では、月給で勤める職員の一九年の平均年収は約三百六十万円で全職業平均より百万円程度低い。
 国は介護報酬の処遇改善加算などで向上を図ってきたが、なお十分ではない。コロナの感染拡大で職員の心身の負担が増える中、離職者も増える傾向にある。
 処遇改善のために介護報酬を引き上げれば、四十歳以上が納める介護保険料や利用者の自己負担増につながる。ある程度の負担増はやむを得ないとしても、介護報酬とは別に、公費投入の仕組みも検討の必要があるのではないか。
 賃金が上がれば、介護福祉士などの資格を持ちながら離職している人や、働く意欲のある高齢世代の人材確保にもつながる。
 処遇改善は、東南アジアなどから介護職員として働きに来る若者らにとっても、働きやすい環境を整えることになるだろう。
 情報通信技術(ICT)やロボットを導入して見守りや身体介助の負担を軽減することも、介護職の人材確保に資するに違いない。
 少子化に伴って家族だけによる介護はますます難しくなり、介護職員はより必要な存在となる。介護職が日本を支える尊い仕事であるとの認識をまず、社会全体で共有しなければならない。

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