<わたしの転機>ビッグバンドで青春再び 元公務員が妻のすすめで35年ぶりにドラムたたく

2019年6月5日 02時00分

ジャズオーケストラの一員としてドラムをたたく石原正明さん(左端)=愛知県一宮市内で

 愛知県一宮市を拠点に活動するアマチュアのビッグバンド「尾州ジャズオーケストラ」。若者や中年世代に交じり、ドラムをたたくのは団員最年長の石原正明さん(71)=同県稲沢市。公務員を退職後、約35年ぶりにスティックを握り、練習を重ねて有料ライブでの演奏までこぎ着けた。
 五月の有料ライブで二曲演奏しましたが、ものすごく緊張してぎくしゃくした音になってしまいました。ブランクは大きい。これを励みにもっと頑張りたい。
 再開するきっかけをくれたのは、ばあちゃん(妻)でした。僕は稲沢市職員を定年退職した後も働いていましたが、四年前、住民と行政との橋渡しをする区長を引き受けることになり、その役割に専念することに。ところが意外と自分の時間があった。ボーッとしていたら、ばあちゃんが言ったんです。「何かやらないかん。車庫にドラムセットがあるんだから、出してやればいいじゃん」と。
 よし、やってやるかとまずスネアドラム(小太鼓)を取り出し、革を張り直して練習を始めました。いきなりドラムセットをたたくのは無理ですからね。左右の手で均等に打つには、利き手でない左手も筋力がいる。左手で荷物を持つ習慣は続いていたのに、筋力は衰えていました。スネアだけ一年練習し、ようやく手が動くようになりました。続けるにはお金が要りますから、老人ホームの送迎のアルバイトもしています。
 もともとドラムを始めたのは高校三年の時。白黒テレビで見たソロが格好良くてね。後輩の家にあったドラムを借り、独学で練習しました。当時はロックです。県内の別の高校の子たちとバンドを組み、コンテストに出ました。ボーカルが後に「GARO」を結成した大野真澄君。予選会で大野君は「いい声してるね」と審査員に絶賛されました。
 大野君は東京へ行き、他の子も進学や就職でバラバラになりましたが、僕は新たにバンドを組んで演奏を続けました。今度はジャズ。ドラムを少しずつ買いそろえ、音楽教室で基礎から学び直しました。でも、三十五歳のころ、メンバーの転勤で活動を休止し、練習も途絶えてしまいました。
 ビッグバンドは初めて。音の厚みに魅力を感じ、昨春入団しました。もう一人のドラム奏者の演奏を録画して練習し、四曲マスターしました。次に挑戦したいのは「A列車で行こう」。同世代の人たちに「あんなじいさんでもできるんだ」と何かを始める勇気を与えられたらと思います。 (小中寿美)

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