失敗しても笑顔、笑顔、笑顔…競技を楽しむ選手たち スポーツの原点思わせる五輪の新風

2021年8月4日 21時10分

スケートボード女子パーク決勝 3回目の演技を終え、声援に応える岡本碧優=有明アーバンスポーツパークで

 技を失敗しても白い歯がこぼれる。ライバルが難技を成功させれば抱き締めて祝福する。4日、日本勢が金、銀の2つのメダルに輝いた東京五輪新採用のスケートボード女子パークの選手たちは、重圧を感じることなく、競技を楽しんでいるように見えた。五輪に新しい風が吹いている。

◆ライバルは「友達」 転倒してもたたえ合い

 会場の有明アーバンスポーツパークにはアップテンポな音楽が流れ、選手たちは和気あいあいと試技に臨む。最終滑走。4位につけていた岡本碧優みすぐ(15)=MKグループ=が勝負を懸けた大技で転倒した。涙を浮かべて待機場所に戻ると、駆け寄ってきたライバルたちに抱擁された。米国発祥のスケートボードには、たたえ合いの文化があるという。岡本は試合後、振り返った。「仲間が待っててくれて、とてもうれしかった」

女子パーク決勝 演技後、選手たちに担がれ、たたえられる岡本碧優=有明アーバンスポーツパークで(AP)

 メダルを取った日本勢は自然体で臨んだようだ。試合後の記者会見で、頂点に立った四十住よそずみさくら(19)=ベンヌ=は「全然緊張しなかった」と明かしている。銀メダルに輝いた12歳の開心那ひらきここな(WHYDAH GROUP)は「いつも通り、みんな仲良く友達としてやっていた」。

◆楽しむ姿勢、緊張をほぐす

 元々、スポーツの語源はラテン語で「遊び」「気晴らし」を意味する。楽しむ姿勢は、スポーツの原点を思い起こさせる。
 「楽しいことをやっていると脳にメッセージを送ると、体の余分な緊張を取り除くことが期待できる」。トップアスリートを精神面からサポートする日本メンタルトレーナー協会理事の浮世満理子さんは、そう説明する。担当する選手には試合前に「笑顔で息を吐いて」と声を掛ける。

◆冷静な笑顔も、はじける笑みも

女子シングルス3位決定戦 シンガポール選手を破って銅メダルを獲得し、笑顔で引き揚げる伊藤美誠(左)。右は松崎太佑コーチ=7月29日、東京体育館で

 東京五輪の他競技にも「笑顔」の選手たちがいた。卓球女子の伊藤美誠(20)=スターツ=は試合中、意識的に口角を上げる。精神面の浮き沈みをなくし、冷静になるためという。3日にボクシング女子初の金メダルを獲得したフェザー級の入江聖奈せな(20)=日体大=は、はじけるような笑みで入場する姿が話題になった。

女子フェザー級で金メダルを獲得し、笑顔の入江聖奈=3日、両国国技館で

 東京五輪で実施されるのは33競技。成り立ちに違いがあるので一様である必要はない。ただ、今大会は、体操女子の米国選手が精神面の不調から棄権するなど、アスリートがいかにプレッシャーにさらされているかが改めて浮き彫りになった。
 東京都立大の舛本直文客員教授(五輪研究)は「五輪は他の大会と異なり、オリンピズムという教育思想、平和思想に基づいたイベントであることは忘れないでほしい」と五輪の理念を尊重する一方で「重圧を背負い過ぎる選手は、ストリートカルチャー的なスポーツを楽しむ若者の遊びや気晴らしの精神を参考にしてもいいのではないか」と話す。(兼村優希)

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