菅政権の言葉、国民に響かず 情報発信に「失敗」専門家が代弁

2021年8月6日 06時00分
<民なくして 2021年夏>
「この厳しい状況にもかかわらず、なかなかメッセージが伝わらない。政府から発信してもらいたい」
 5日に開かれた専門家らによる政府の基本的対処方針分科会。新たに8県へのまん延防止等重点措置の適用を了承した後、尾身茂会長は記者団に国民に伝えるメッセージの重要性を繰り返し口にした。

◆専門家に広がる焦燥感

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、専門家の間には焦燥感が広がる。緊急事態宣言の対象に首都圏3県などを追加することが諮られた7月30日の分科会では、菅政権の情報発信への不満が噴出。メンバーの武藤香織・東京大医科学研究所教授は本紙の取材に「説明不足というか、国民とのコミュニケーションや政府への信頼維持に失敗していると思う」と苦言を呈する。
 国内の新規感染者数は東京五輪の開幕後に過去最多を更新。大都市を中心に急増しているが、繁華街はにぎわい、政府と国民の間で現状への危機感が共有されているようには見えない。
 分科会などの専門家は、コロナ対策で科学的な知見を踏まえて政府に助言する役割を担うが、政策決定や国民に説明して納得を得る責任を負うのは政治家だ。
 だが、現状はどうか。菅義偉首相は五輪と感染拡大の因果関係は「ない」と明言したり、感染者が増加している局面で「人流は減っている」と主張したりするなど、国民の警戒感を緩めるような発言を連発。懸念を強めた専門家が民意を意識し、発信役になっているのが実情だ。

「メッセージの発信を」と求め続ける尾身茂会長(左上)の言葉は、菅首相(右上)にどう響いているのか。東京・渋谷は人の流れが絶えない

◆首相に直談判した尾身氏だが…

 尾身氏は五輪開幕が迫った5月から6月にかけ、連日のように国会審議に出席し「今の状況で(大会を)やるのは普通はない」「五輪では当然、人の流れが生まれる」などと警鐘を鳴らし続けた。7月30日には、コロナ対応を説明する首相の記者会見に先立ち、首相に面会を求め「人々の気持ちに寄り添うメッセージを出してほしい」と要請した。関係者によると、五輪に対する国民の複雑な心情を受け止めた上で、協力を呼びかけるよう促した。
 首相は会見で「国民と危機感を共有できる自信はあるか」と問われ、こう答えた。
 「国民の皆さんに、それぞれの立場で危機感を持っていただくことが、ものすごく大事なことだ」
 首相にとっての国民に寄り添うメッセージだったのだろうか。(中根政人)

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