政策決定の核心は「ブラックボックス」 「5大臣会合」「連絡会議」議事録なく検証もできず…

2021年8月6日 06時00分
<民なくして 2021年夏>
 政府の新型コロナウイルス対策が国民の理解や共感を得られない背景には、政治家の発信力不足だけでなく、政策決定過程の不透明さがある。政治判断の核心部分はブラックボックスの中だからだ。

◆分科会「政府方針の追認」に不満

 5月14日に開かれた専門家らによる政府の基本的対処方針分科会は、異例の展開をたどった。政府は群馬、石川など5県をまん延防止等重点措置の区域に追加することを諮ったが、メンバーからは当初案になかった北海道など3道県への緊急事態宣言発令を求める声が相次いだ。閣議出席のため中座した西村康稔経済再生担当相は、菅義偉首相と相談した上で、専門家の意見を全面的に受け入れることを決めた。
 以前の分科会は、政府の方針に「お墨付き」を与えることの繰り返しだった。だが、この日の会合では専門家から「諮問の原案が決まった経緯や、地域の細かい事情について、情報を持っていない。(政府が)最初にもう少し説明をしてから議論してもいいのではないか」と注文が付いた。
 政策決定を主導する政権中枢で、どのような議論が重ねられているのかは見えない。
 政府はコロナ対応を行政文書管理のガイドラインに基づく「歴史的緊急事態」に指定。政策の決定に関わる会議では議事録・議事概要の作成を義務付ける。
 だが、首相や西村氏ら関係閣僚が参加する「5大臣会合」などの非公式協議や、昨年9月までの安倍政権で開催されていた「連絡会議」は、いずれも意見交換が目的との位置付け。実際には政策決定プロセスの核心部分とされるが、政治家同士のやりとりを記した議事録などは残らない。

◆公文書を軽視し続ける安倍、菅両政権

 公文書管理に消極的な政府の姿勢は、これまでもたびたび指摘されてきた。安倍政権では、南スーダンに派遣された自衛隊の日報隠蔽や、安倍晋三前首相の妻昭恵氏と関わりがあった学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る決裁文書改ざん、「桜を見る会」の招待者名簿廃棄などが相次いで問題化。菅政権でも、憲法が保障する「学問の自由」を侵すとして批判を浴びた日本学術会議の新会員任命拒否問題に関し、理由や経緯を記した文書の開示に応じていない。
 公文書は「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と公文書管理法で定義されている。適切な管理や保存をおろそかにする一連の対応は、今だけでなく、後世の国民に対しても説明責任を果たそうとしないことを意味する。
 日本学術会議の新会員任命を拒否された一人、岡田正則早稲田大教授(行政法)は本紙の取材に「現在の政権はブレーキが壊れ、暴走している。失敗を何とか隠して、票を集めるということだけになってしまっている」と指摘した。(中根政人)

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