<つなぐ 戦後76年>長崎被爆者が苦悩語る ドキュメンタリーきょうから有楽町で上映 貧困、いじめや差別も

2021年8月6日 07時23分

映画で原爆の体験を語る被爆者(mkdsgn提供)

 八月九日に長崎に原爆が投下されてから今年で七十六年。被爆者のドキュメンタリー映画「a hope of nagasaki 優しい人たち」が六日から、ヒューマントラストシネマ有楽町で公開される。手がけたのは元衆院議員で映画監督の松本和巳さん(56)。「被爆者のつらい経験を通して平和について考えてほしい」と語る。(砂上麻子)
 映画は二〇一九年三月〜十月、当時八十三歳から九十七歳の被爆者十人を撮影した。多くはこれまで被爆体験を語ったことはない。
 松本監督は、長崎でやろうとしていた別の仕事が中断。長崎のためにできることを考え、被爆者の声を残すことにした。「被爆者の取材はし尽くされている」と言われたが、知人の母親が体験を語ったことがないと聞き、取材を始めた。

監督を務めた松本和巳さん=渋谷区で

 「思い出したくない」と断られることもあったが、「今撮っておかなければ、聞くチャンスが失われる」と話を聞き続けた。「痛くてかゆくて眠れなかった」「真っ黒な母親が横たわっていた」。被爆者たちは原爆直後の惨状をカメラの前で語ってくれた。
 被爆者を苦しめたのは原爆だけではなかった。家族や家を失い、貧困やいじめ、偏見に苦しんだ経験も明かしている。松本監督は「未知のことに対して恐怖を感じ、すぐにいじめや差別に向いてしまう。いじめや差別は、コロナ禍の今も起きているし、福島の原発事故の時もあった。人間がやってしまうことを共有しないと同じことが繰り返される」と話す。
 「優しい人」というサブタイトルは、原爆を投下した米国に対する被爆者の言葉から付けた。松本監督は「つらい経験を乗り越えた強さがあるからこその『優しさ』だと思う」と言う。
 原爆投下から七十六年。被爆者の高齢化と記憶の風化が進む。「今聞いておかないと永遠に記憶が失われる」として、現在も被爆者を訪ね、被爆体験の聞き取りを進めている。

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