<争点を行く 横浜市長選2021>(5)ふるさと納税で減収 市税流出に歯止めを

2021年8月7日 07時21分

横浜市の返礼品を紹介するふるさと納税のウェブサイト

 「率直に言うと、また増えたかと。制度の趣旨に沿って取り組んでいるが、市財政への影響を考えたら好ましい状況ではない」。横浜市の大塚貴司税制課長は慎重に言葉を選んだ。
 市ではふるさと納税による減収が年々拡大している。総務省の発表によると、市民が昨年、他の自治体に寄付したことによる本年度の税控除額(流出額)は百七十六億円。自治体別のデータが公表されている二〇一六年度以降、六年連続で全国最多だ。
 ふるさと納税は、名前の通り、ふるさとなど応援したい自治体に寄付をする制度。〇八年に当時総務相だった菅義偉首相が主導してスタートした。しかし、寄付先の自治体から贈られる特産品などの返礼品を目当てに他自治体に寄付をする住民が増え、特に都市部の自治体は税収減に直面している。

◆巣ごもり需要

 拍車を掛けたのは、新型コロナウイルスだ。大塚課長は「コロナ禍による『巣ごもり需要』の影響もあり、ふるさと納税をする人が増えた」と話す。昨年寄付した市民は二十六万人と、前年から六万人増えた。
 一方、市への昨年度の寄付額は二億九千万円。対象メニューに「コロナ対策への寄付」を追加したほか、横浜中華街の飲食店の点心や、横浜港クルーズやホテル宿泊など体験型の返礼品を拡充したのが奏功し、前年度(九千万円)から二億円伸びたが、流出額には遠く及ばない状況だ。
 こうした現状に、「ふるさと納税によって流出している市税は、本来は私たち川崎市民のために使われる貴重な財源です」(川崎市)、「ふるさと納税で住民税が流出しています」(東京都杉並区)などのポスターをつくり、住民に苦境を伝えた自治体もある。
 ただ、横浜市の足利有喜財源課長は制度の趣旨には反対していないとして「個々の市民への働き掛けは考えていない」と話す。市は指定都市市長会などを通じ、自治体財政に与える影響を抑制するための制度の見直しを国に求めている。

◆首長の役割は

 市はどう対応すべきなのか。
 制度に詳しい佐藤主光(もとひろ)・一橋大教授(財政学)は「理念は悪くないが運用が趣旨にかなっていない」として、返礼品の中止▽返礼品分の税額控除は認めない▽特産品の提供を期間限定にする−など、さらに具体的な改善策を国に提案すべきだと話す。
 一方、元鳥取県知事の片山善博・早稲田大大学院教授(地方自治論)は「自治体による税金の奪い合いで、不毛な戦いになっている」と、制度自体を廃止すべきだと考えている。
 改善の方向は、専門家の間でも分かれる。しかし、国の制度だからといって、自治体が受け身になるべきではないという点では一致する。
 片山氏は制度に問題や改善点がある場合は「記者会見などで意思を明確に表明し、同調する周辺の自治体とともにグループをつくり、国に要望するべきだ」と自身の経験から強調する。
 市政の舵(かじ)を取るリーダーに求められる資質は? 「市民の現在、将来を考え、議会や記者会見で自分の言葉でまともに受け答えができる人がふさわしい」と答えた。「選挙でその候補を真剣に選ぶことが市民の責任だ」(杉戸祐子、丸山耀平)
 =おわり

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