コロナ禍の五輪が残したものは? 「国際感覚とのズレ」「日本の劣化」「雰囲気に流される未熟な国民性」…各界識者に聞く

2021年8月9日 06時00分

緊急事態宣言下、無観客で行われた東京五輪の閉会式=8日、国立競技場で

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)下、原則無観客など前例のない形で実施された東京五輪が8日、閉幕した。日本勢が過去最多の27個の金メダルを獲得する一方、ウイルスを抑え込むことはできず、1日当たりの新規感染者数は連日、各地で過去最多を更新している。コロナ禍での「平和の祭典」は何を残したのか、各界の識者に聞いた。(佐藤直子、中沢佳子) 

◆「医療崩壊、影響受けるのは障害者」

 「政府は過去最多の金メダルを獲得して成功だったと考えているかもしれないが、それは違う。選手の努力には敬意を払うとしても、これほどの犠牲を出してまでやる必要があったのか」。元外交官の飯村豊・政策研究大学院大客員教授(外交)はこう振り返る。
 感染拡大防止のために選手らを外部から遮断する「バブル方式」は機能せず、崩壊。緊急事態宣言も4度目となれば慣れが生じて人の流れは思うように減らず、全国のコロナの新規感染者数は連日、1万人を超える。五輪中止を求めるオンライン署名の呼び掛け人にもなった飯村さんは「医療崩壊で深刻な影響を受けるのは障害者。パラリンピックは中止を」と訴える。
 大会組織委員会関係者の辞任、解任も続いた。飯村さんは、国際感覚の欠如が問題の背景にあると見る。「ユダヤ人虐殺をかつてコントのネタに使っていた演出家を開会式の制作チームに起用するなど感覚がずれている。日本は世界から信用を失った。政府は早急に検証委員会を立ち上げ、どこに問題があったのか議論するべきだ」

◆「男性中心の差別的な社会クリアに」

 大妻女子大の田中東子教授(メディア文化論)は「男性中心で女性に差別的な日本社会の問題が、どんな時よりクリアに見えた。五輪の予想外の収穫だった」と皮肉交じりに話す。
 女性蔑視発言をした組織委の森喜朗会長と、女性タレントの容姿を侮辱する企画を提案した開閉会式の佐々木宏・演出統括が共に辞任。森会長が後任に川淵三郎・元日本サッカー協会会長を指名したのが「密室だ」との批判を受けると、今度は「女性ありき」のような雰囲気になり、橋本聖子五輪担当相が後任に決まった。
 田中さんは「駄目なおじさんのツケを女性が払わされたような格好だったが、橋本さんが選ばれた過程もまた不透明だった。五輪を巡るゴタゴタは、今の日本の劣化を表している」と唱える。

◆「多額の経費 メディアは検証を」

 一橋大の鵜飼哲名誉教授(フランス文学・思想)は「何が何でもと、五輪は反対を押し切るように開かれた。対話を抜きに強行した時点で、平和の祭典は地に落ちた」と解説する。
 2013年に開催が決まった時から反対運動に参加。五輪期間中も毎週金曜日夜、自宅がある長野県松本市の駅頭に仲間と共に立ち、道行く人らと「五輪とは」「平和とは」といったテーマで語り合った。
 コロナ禍で生活に苦しむ人も多い中、今後は不況になるとの予測もある。鵜飼さんは「無観客で収入が減ったこともあり、膨大な赤字が見込まれる。多額の経費が何にいくら使われたのか、適正に執行されたのかメディアが検証する必要がある」と求めた。
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