「命救うためパラ中止を」感染急拡大で病院の対応余力限界に 政府方針は「あまりにも危険」<新型コロナ>

2021年8月10日 06時00分
 首都圏での新型コロナウイルスの感染急拡大で、コロナ患者を受け入れる病院の対応余力が限界に近づきつつある。加えて、中等症患者を状態により入院か、自宅・宿泊療養に振り分ける政府の方針転換が、現場の対応をさらに難しくする恐れもある。 (渡部穣、望月衣塑子)

◆病床4倍にしても追いつかず

 東京都板橋区の日本大学板橋病院は、4月にコロナ対応病床をそれまでの4倍以上に増やした。しかし現在の感染拡大で7割以上が埋まり、高橋悟院長は「病床は逼迫していると言っていい」と危惧する。

日本大学板橋病院の高橋悟病院長

 同病院のコロナ病床は重症者用の集中治療室(ICU)6床と、中等症~重症の患者を診る50床の計56床がある。6日時点で四十数床が使用中で、「ここ1、2週間でどんどん増えてきた」という。
 対応スタッフは全診療科から集めているが、「これ以上コロナ患者が増えると、看護師が足りなくなり、一般病床の受け入れに影響が出るかもしれない」。

◆理想と現実…責任は誰が

 中等症患者に関する国の方針変更は「コンセプトはいい」と前向きに捉えながらも、重症化リスクの見極めの難しさを理由に「実際に機能するかは難しい」とも。現場では、呼吸器が専門外の医師が入院の必要性を判断しなければいけないケースもあるという。
 高橋院長は「安全策を取って入院させればこれまでと変わらなくなるし、自宅で待機させて万が一のことがあった場合に誰が責任を取るのかという議論になる」と指摘した。

◆看護師不足が深刻

 「今週からコロナ対応のため他の手術はほとんど中止になった。人命を考えるなら、パラリンピックは一刻も早く中止すべきだ」。コロナ患者を受け入れる都内の病院勤務の女性医師(50代)は、救える命が救えなくなっている現状に警鐘を鳴らす。
 この病院では、第3波のピークを迎えた1月、都の要望を受けコロナ病床を240床に拡大。しかし、五輪開催前からの感染急増で対応できる看護師が不足し、8月に入って150床まで受け入れた後は、新たな受け入れを止めざるを得なくなった。
 女性医師は「病床があっても、対応できる看護師の数が圧倒的に足りない。都が公表する受け入れ病床数は、現実的に受け入れ可能な数と必ずしもイコールになっていない」と話す。
 さらに今週からは、現在ごく一部継続している手術以外は、出産を除いて全て中止となり「命が確実に救えなくなっている」と危機感が募る。

◆中等症でも一気に重症化の恐れ

 中等症患者の入院判断については「現状、医師でない保健所職員が電話で聞き判断するが、基準の1つの血中酸素飽和度は時々の状況であっという間に変化する。軽症や中等症でも一気に重症化する恐れがあり、それを基準に自宅待機を求めるのはあまりに危険だ」と国の対応を批判した。

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