<社説>収容女性の死亡 入管の閉鎖性問い直せ

2021年8月11日 07時50分
 名古屋市の入管施設に収容中のスリランカ人女性が死亡した事件で、出入国在留管理庁が最終調査報告書を公表した。背景にある国外退去至上主義や入管行政の閉鎖性には触れていない内容だ。これでは再発防止につながらない。
 亡くなったウィシュマさん=当時(33)=は日本語学校の学費が払えず退学し、在留資格を失った。昨年八月に収容されたが、体調を崩し、今年三月に死亡した。
 入管庁は四月に中間報告を発表したが、記載内容と外部病院の医師の所見の食い違いなどが発覚。最終調査報告書が待たれていた。
 報告書では情報共有や休日の医療体制の不備、ウィシュマさんがドメスティックバイオレンス(DV)の被害者だったにもかかわらず、内規に反して事情聴取をしていなかった点などが列記され、それぞれの改善を促している。
 だが、最大の問題はウィシュマさんの仮放免申請を却下していた点にある。仮放免は一定の条件で収容施設から外に出る仕組みだ。
 ウィシュマさんの場合、収容のきっかけは元交際相手の暴力を恐れて交番に駆け込んだことだ。逃亡の恐れは薄い。コロナ禍でスリランカへの定期便が止まり、容易には帰国できず、引受人もいて拘束する合理的理由はなかった。
 それでも収容に固執した背景にはここ数年、長期収容の圧力で収容者に国外退去を促すという送還最優先の方針があった。報告書でも申請却下を正当化している。
 死亡二日前になり、外部医師からの指摘で仮放免を考え始めたという経緯からは、病状悪化から厄介払いしようとした印象を抱く。
 死亡の数時間前、職員が反応の鈍いウィシュマさんに「ねえ、薬きまってる?」と話しかけたという記述がある。薬物常習者とみなすような侮蔑的な対応で、人権感覚がうかがえない。
 改善策には体調不良者の仮放免の運用見直しなどが挙げられた。だが、問われているのは長期収容で在留を諦めさせる強権的な手法ではないか。先の国会で成立が見送られた入管難民法改正案もこの手法の強化に貫かれていた。
 報告書作成には外部有識者も加わったが、人選は当局に委ねられた。入管当局は収容者への医療、在留資格や仮放免の認否などの裁量を独占している。そうした閉鎖性が事件の本質である。第三者を介在させる改革が不可欠だ。

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