ベラルーシの反政権デモ1年「革命は女の顔をしている」 “欧州最後の独裁者”に女性たちがNO

2021年8月11日 17時00分
 旧ソ連ベラルーシで、大統領選の不正を機に反政権デモが始まって1年。「欧州最後の独裁者」と呼ばれるルカシェンコ大統領(66)に、「ノー」を突きつけた中心は女性たちだ。ベラルーシの民主化運動を「女性革命」として読み解く。(モスクワ・小柳悠志)

ミンスクで治安部隊を前にハートマークをつくる女性活動家マリア・コレスニコワ氏=昨年8月撮影(スプートニク)

 「大統領職は重責だから女性にはとても務まらない」
 昨年8月の大統領選の前、現職ルカシェンコ氏はこう言い放った。対抗馬となりうる男性候補たちを投獄し、自らが圧勝する作戦だった。

「欧州最後の独裁者」と呼ばれるルカシェンコ氏(ベラルーシ大統領府提供)

 思惑は外れ、選挙戦では1人の女性候補に支持が集まる。拘束された夫に代わって出馬を決めた元教員チハノフスカヤ氏(38)。ルカシェンコ氏は票数操作で6選を果たすが、直後から抗議デモが始まり、首都ミンスクで参加者は最大20万人に達した。
 現地の学生エカテリーナさん(18)は「ルカシェンコは『女性は政敵になりえない』と見くびり、足をすくわれた」と語る。
 ルカシェンコ氏は愛人との間に生まれた息子を外遊に同行させ、「美人養成」の国営モデル学校を設立したことでも知られる。

◆圧政で多くの男性が監獄に

 四半世紀に及ぶ圧政で、多くの男性が監獄に収容される中、抗議運動の表に出てきたのが女性たち。彼女たちには夫や子どもを守ろうとする動機があった。
 女性たちは政権交代を掲げ、花を手におそろいの白い服で行進したり、歌を歌ったり。

ミンスクで花を手にルカシェンコ大統領の退場を求める女性=昨年10月撮影(TUT.BY提供)

 特に有名になったのは政治活動に身を投じたフルート奏者コレスニコワ氏(39)だ。治安部隊に拉致され、隣国に追放されかかると自身の旅券を破って出国を阻止した。
 か弱く、国父たる大統領に従順なはずの女性が起こした反乱。ドイツでは「革命は女の顔をしている」と題したベラルーシ政治危機の分析本も出版された。ベラルーシの反政権派でノーベル文学賞作家アレクシエービッチ氏(73)の主著「戦争は女の顔をしていない」(1985年)をもじったネーミングだ。
 「ベラルーシにも女性の社会参画の考え方が入ってきた」。ミンスクの男子学生(21)は、昨年来の抵抗運動を世界的な「男女同権」の流れの一つと見る。

◆性的暴力や不審死も

 道半ばの「革命」は痛みも伴う。治安部隊による女性デモ隊への性的暴行が相次いだほか、不審死を遂げた市民も多い。大統領選後、ウクライナやポーランドなど隣国に退避したベラルーシ人は1万4000人に達すると独立系メディアは報じている。
 ポーランドに亡命した女子学生ポリーナさん(20)は「ルカシェンコこそがテロリスト」と語り、祖国に残る仲間とともに政権交代を目指すとした。
 欧州連合(EU)欧州議会は昨年末、人権擁護活動に関わる「サハロフ賞」をベラルーシ反政権派に贈っている。

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