デルタ株の感染力、なぜ強い? 細胞へのくっつきやすさ、まるで「ひっつき虫」

2021年8月26日 00時12分

デルタ株。直径は1万分の1ミリ。スパイクタンパク質と呼ばれるとげが変異し細胞にがっちりとりつくという(東京都健康安全研究センター提供)

 新型コロナウイルスが従来株から変異株へほぼ置き換わりました。関東では、インド由来で感染力が強い変異株「デルタ株」が新規感染者の99%に達したと推定されています。デルタ株はなぜ感染力が強いのでしょうか。ポイントは、人の細胞へのくっつきやすさと、感染した人が出すウイルスの数の多さです。(増井のぞみ)=2021年8月26日更新
 球形の新型コロナは、人の細胞の受け皿(受容体)にくっつくとげ(スパイクタンパク質)で表面が覆われています。変異株は、とげをつくる遺伝子に「L452R」と呼ばれる変異が入り、とげの形が従来株と少し変わりました。詳しい仕組みは分かっていませんが、変異株のとげは、受け皿にがっちりとくっつきやすくなりました。

◆従来株は「枯れ葉」、くっついても離れやすい

 くっつきやすさはどれくらい違うのでしょうか。感染症に詳しい森島恒雄・愛知医科大客員教授は、デルタ株を「ひっつき虫」と呼ばれる雑草オナモミの実に例えます。草むらを歩いた時に服にオナモミのとげがくっつくと、1個ずつ取るのが大変です。同様に、デルタ株はいったん人の肺などの細胞にくっついたら離れにくいというのです。

とげが服にくっついたら離れにくいオナモミの実(東京都薬用植物園草星舎提供)

 これに対し、森島さんは従来株を「枯れ葉」に例えます。地面に座った時に服にくっついた枯れ葉は、手で払ったらすぐ落ちます。同様に、従来株は人の細胞の受け皿にくっついても離れやすいといいます。「デルタ株が広がった現状は、小さな小さなひっつき虫が空気中に漂っているようなイメージだ」と森島さんは語ります。
 上野貴将・熊本大教授がサルの細胞で実験したところ、くっつく力が2倍程度に上がりました。「デルタ株の変異が入ると細胞にくっついて入り込む効率が高くなり、半分ほどの数で感染した」といいます。
 また、くっつきやすいデルタ株では、よりたくさんの肺の細胞に入り込んで感染して、急激な重症化につながりやすくなります。森島さんは「現在、30~50歳で起きている急激な症状の悪化はこのためではないか」と推測します。

◆飛沫で大量に拡散 「不織布マスク隙間なく着用を」

 たくさんの細胞に感染すると、増殖するウイルスも多くなります。そのため、デルタ株に感染した人が呼気やせき、くしゃみなどで外に出す飛沫ひまつには、含まれるウイルスの数が多いと考えられます。中国の研究チームは7月、デルタ株に感染した人は従来株に感染した人に比べ、感染が最初に判明した時のウイルス量が平均で約1000倍多かったと報告しました。
 少数のウイルスでは確実に細胞にとりつけず感染を広げられません。多数のウイルスが侵入し、より強く細胞にくっつくことで感染する確率を上げます。デルタ株の場合、細胞に取り付く力がおよそ2倍のウイルスが、飛沫で大量に飛び散ります。人との会話で、従来株の半分以下の時間で感染するという試算もあります。
 ウイルスのくっつきやすさは変えられませんが、人が周りに広げたり吸い込んだりするウイルスの数は減らせます。森島さんは「布マスクやウレタンマスクは、飛沫を防ぐ効果が不織布マスクより落ちる」と指摘し、「なるべくウイルスにさらされないよう、人が周りにいるところでは、効果の高い不織布マスクを隙間なく着用すること、今まで以上にこまめな換気、人との距離をとる、手洗いなどが重要になる」と強調しています。

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