香害 被害者が全国組織 柔軟剤など化学物質で体調崩す 仕事、学業に支障「危険性知って」

2021年8月12日 07時15分
 柔軟剤や芳香剤、合成洗剤などの人工的な香りに含まれる化学物質によって、目まいや吐き気、呼吸困難などさまざまな症状が出る「香害」。被害に苦しむ人たちが全国組織「カナリア・ネットワーク全国」を結成した。学校や会社を辞めざるを得ないなど生活に大きな支障が出ている人も多く、「空気は皆が共有している。誰もがいつ発症するか分からない危険性を知ってほしい」と訴える。 (五十住和樹)
 「広く売られているもので体調を崩すなんて、信じられなかった」。宮城県多賀城(たがじょう)市の庄司美穂さん(52)は、柔軟剤の香りで突然発症した三年前を振り返る。
 夫の良博さん(51)と夫婦の夢だったカフェを開いて五年目の夏、頭痛やのどの痛み、動悸(どうき)に襲われた。客が帰ると症状が治まる。ドラッグストアでも体調が悪化したことから、商品が原因と確信。良博さんも発症し、翌年に東京の専門医を夫婦で訪ねたところ、「香り付き柔軟剤をきっかけに化学物質過敏症を発症したのでは」と診断された。
 「香りに近づくとダメージが大きい。目まいでテーブルに運んだコーヒーを落としそうになったり、思考が止まってレジを打てなくなったりした」と美穂さん。医師に「原因物質を取り込まず、ストレスをためない生活を」と言われ、やむを得ず店頭に「人工香料自粛のお願い」と張り紙をしたら、客足は半分以下に。応援してくれる人もいたがネット上などで変人扱いされ、二年前の冬、閉店に追い込まれた。
 日本消費者連盟などでつくる「香害をなくす連絡会」が二〇一九年末から約三カ月間行った調査=グラフ=で、回答者九千三十人中、香りで体調悪化があると答えた人は七千百三十六人。うち、18・6%は学校や仕事に行けなくなった(無回答二百七十八人を除外して計算)。
 「体調悪化がある」の大半が柔軟剤や香り付き合成洗剤が原因だが、線香や防虫剤で症状が出る人も。近年は香りを長持ちさせるため香料を含むマイクロカプセルを使った商品もあり、長期にわたって香害をもたらすことが懸念されている。
 自らも健康被害を受け、ネットワークの共同代表を務める稚内北星学園大の元学長、斉藤吉広さん(60)は「被害者の多くは家から出られず、買い物や通勤・通学もできず孤立している。多くの声を集めて香害が全国にあることを可視化したい」と話す。ネットワークでは(1)健康被害や生活困難の状況を公開する(2)会員同士が対処法などを情報交換し、被害の拡大阻止などに向け活動する−ことなどを予定している。
 米国の疾病対策センター(CDC)は〇九年、職員に香り付き洗剤などで洗った衣類を着てこないように求め、施設内で香水や、芳香剤など香り付き製品の使用を禁止した。柔軟剤など生活用品から揮発する化学物質は多種類に及ぶが、日本では健康への影響などの調査は行われていないのが現状。二月の衆院予算委員会で萩生田光一文部科学相は「学校に来られない子がいるなら極めて重い課題」と答弁した。
 四年前から香害を追及している日本消費者連盟の「消費者リポート」編集長杉浦陽子さん(52)は「予防原則(健康に重大な影響を及ぼす可能性がある時、科学的に因果関係が解明されていなくても規制する考え方)を基に、販売を規制すべきだ」と指摘する。
 ネットワークは活動資金をクラウドファンディングで募っている。

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