雇用悪化、就職氷河期が再来か 補正予算は成立したけれど…

2020年5月1日 02時00分
 経済対策の費用を盛り込んだ二〇二〇年度の補正予算が三十日、給付金を巡る混乱で当初見込みから一週間近く遅れて成立した。対策は当面の倒産や失業を防ぐ「止血」が狙い。だが、緊急事態宣言の延長などで経済活動のストップが長引けば、雇用状況は急激な悪化に向かいかねない。「過去最大の対策」(安倍晋三首相)も、その効果は見通せない。 (渥美龍太)

▼綱渡りの日々

 「五月の連休も窓口を開けてほしい」。東京都内の信用金庫幹部は先週、政府から要請を受けた。補正予算の成立を受け民間の金融機関でも始まる無利子、無担保の緊急融資に対し、経営が苦しくなった企業からの申し込みの殺到が予想されるからだった。
 企業や個人事業主の資金繰り支援は「倒産を防ぎ雇用を維持する政策の柱」(経済官庁幹部)だ。先に始めた政府系金融機関による融資は申し込みが殺到して処理が滞り、民間の銀行や信金などに対象を広げた。
 鉄板焼きの「鉄板さくら田谷(たや)」(東京・港区)は四月の売り上げが前年比で八割減。経営する田谷和典さん(63)はテークアウトでしのぐが「月四十万円の家賃が厳しい」と明かす。
 融資は申し込んだものの借金の残高は増える。申請を検討する給付金も家賃に充てればすぐ消える。閉店が「正直頭をよぎった」といい、廃業と背中合わせの綱渡りの日々だ。

▼倒産懸念企業が急増

 そもそも「給付金などで予算に盛り込んだのは、企業が一~二カ月をしのげる程度の金額」(エコノミスト)で、厳しい状況が長期化することへの対応は想定していない。
 信用調査会社の帝国データバンクが、政府支援がないまま全企業の売り上げ半減が続いたとの前提で試算をした。すると、五カ月で倒産懸念企業が三万社、八カ月で十一万社に達する、という厳しい結果が出た。担当者は「長期化すれば倒産の増加スピードは急激に加速する」と警告する。
 倒産しなくても雇用を減らすケースもある。休業した関東地方のホテルは助成金を活用して正社員の給与は補償しつつ、派遣会社との契約は解除。派遣社員の女性は「正社員との差がおかしい」と不満を訴え、失業への不安が募る。
 企業に雇用を維持してもらう「雇用調整助成金」も対策の柱だ。政府は二十五日、要件を満たせば休業手当の全額を補助する方針を示した。しかし、労働組合には企業側が非正規労働者に適用しないといった相談が後を絶たない。

▼採用取り消し

 求職者一人当たりの求人数を示す有効求人倍率も三月、三年半ぶりの低い水準に低下した。新規の採用を控える動きは足元でさらに広がり、若者の雇用にも影響が及び始めている。
 東京都内の整体院運営会社がコロナの影響で四月十日に自己破産を申請し、成富(なるとみ)真緒さん(21)は採用を取り消された。知人の紹介で名古屋市の会社に入れたが「運が良かっただけ。多くの若い人が厳しい状況だと思う」と強調した。
 格差問題など日本の雇用に詳しい早稲田大の橋本健二教授は「企業の求人活動が止まり、新卒学生には氷河期の再来もあり得る」と指摘。「非正規切りが進みつつあり、雇用は過去に経験のない事態に陥る恐れが出てきた」と警鐘を鳴らす。

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