甘い想定崩れ病床逼迫も備えなし… それでも菅首相はワクチン頼み ロックダウンは「日本になじまない」

2021年8月13日 06時00分
 政府のコロナ対策分科会が東京での人出の5割削減を求める一方、政府は国民に外出抑制を求める強いメッセージを出していない。政府はワクチン接種が進めば重症者が減ると見込み、病床逼迫ひっぱくに備えていなかった。甘い想定が崩れた後も菅義偉首相はワクチン接種の効果に期待するばかりで発言には危機感が乏しい。

◆現行特措法では個人行動を制限できない

 分科会が提言した人出抑制の具体案は、県境を越える移動の自粛など、政府が呼び掛けてきた内容と変わらない。現在の新型コロナ特措法では、緊急事態宣言の対象地域の首長が、飲食店に時短営業や休業を要請・命令することができるが、対象は店舗に限られ、個人の行動を制限する規定になっていないためだ。

記者団の取材に応じる菅首相=10日、首相官邸で

 このため、国民に行動変容を求める首相の呼び掛けが重要になる。コロナ分科会の尾身茂会長も、先月30日の首相記者会見に同席した際「(国民の)複雑な気持ちに寄り添うメッセージ」が必要だと強調した。
 だが、首相は広島市での今月6日の会見で「東京の繁華街の人流は、東京五輪前と比べて増えていない」と従来の楽観的な見方を示した。五輪が感染拡大に与えた影響についても「つながっているとは考えていない」と否定した。
 9日の長崎市での記者会見では、国民に外出の自粛などを呼び掛けたが「対策の決め手はワクチン接種だ。総接種回数は1億回を超えた」と、あらためて接種促進の姿勢を強調した。

◆強いメッセージ発信できず

 医療体制が逼迫する中、全国知事会や専門家の一部からはロックダウン(都市封鎖)を可能にする制度改正を求める声が上がる。個人への罰則付きの外出自粛要請などが念頭にあるとみられる。自民党の下村博文政調会長は「特措法を改正して対応できる。国民に対してメッセージにもなる」と語る。
 首相は「日本にはなじまない」と否定的だが、知事会や与党を納得させられるだけの強いメッセージは発信できていない。(上野実輝彦、村上一樹)

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