庶民の叫び 歌にのせ 『カンカラ鳴らして、政治を「演歌」する』     カンカラ三線・演歌師 岡大介(たいすけ)さん(43)

2021年8月15日 07時00分

阿久津知宏撮影

 新聞ではネタになる政治の迷走が紙面を賑(にぎ)わせているのに、コロナ禍で演芸会や酒場の仕事は次々中止となりました。でも悪いことばかりではない。沖縄のカンカラ三線(さんしん)で「演歌」を歌ってきた二十年を振り返り、この本を出すことができました。
 二十歳の時に吉田拓郎に憧れてギターでフォークソング。親世代の音楽に興味を持ったことに、みんなから珍しがられましたが、二十歳の拓郎が作った歌に共感したのだからごく自然なことだと思っていました。
 日本フォークのルーツをたどり、惹(ひ)かれたのは外国曲ではなく明治大正時代に流行した「演歌」。コブシを回さない本来の「演歌」は、自由民権運動から生まれた社会風刺の「演説歌」のこと。小唄や民謡、昭和歌謡をうたう人はたくさんいるのに、なぜか「演歌」をうたい、伝えようとする若者は一人もいません。
 高田渡さんの「あきらめ節」が気になり、東京・吉祥寺の焼き鳥店「いせや」で直接尋ねると、添田唖〓坊(そえだあぜんぼう)の「演歌」だよ、と教えてくださいました。「演歌」はもの言えぬ庶民の叫び。明治の歌でも現代を風刺しているかのように聞こえますが、今後に残すには新たな風刺が必要です。歌いだした当初、政治にほとんど興味がありませんでした。それでも全国を廻(まわ)ると弱者に冷たい政権への怒りを口にするお客さんが多く、使命感で歌にのせるようになりました。
 忘れられないのは東日本大震災の後に岩手県宮古市で「籠の鳥」を歌った時の被災者女性のひと言、「仮設住宅に閉じ込められている私たちが籠の鳥よ」。このようなメッセージを歌で多くの人に届けなければという思いを強くしました。
 本物の「演歌」を知る小沢昭一さんや永六輔さんら、今は亡き大先輩とお会いし「今後もしっかり歌いなさい」とバトンを渡されたことは身の引き締まる思いです。
 社会風刺を続けるほど大舞台から遠ざかる気がしますが、そんな状況も笑い飛ばせるよう、人間が平等に人間であることを訴える日本代表ソング「演歌」をこの本と共に、カンカラ一本全国に届けて参ります。
♪アメリカソングに踊らされ 演歌はコブシと朽ちていく ニッポンソングよ何処(どこ)へ行く ヨワッタネ カンカラ演歌が此処(ここ)にあり! =寄稿
 dZERO・一九八〇円。
〓は、虫へんに單

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