米の最長戦争「失敗」…バイデン政権に批判 アフガンへの米の介入無駄に タリバン政権復活

2021年8月17日 06時00分

アフガニスタンの首都カブールの米大使館上空を飛行する米国のヘリコプター=15日(AP)

 米国を史上最長の戦争に巻き込んだアフガニスタン情勢は、反政府武装勢力タリバンが全権を掌握したことで振り出しに戻った。8月末の米軍完全撤退を待たずにタリバンの首都制圧を許し、バイデン米大統領の判断は「失敗」との批判も。2001年の米中枢同時テロを受けて始まったテロとの戦いは、20年経ても終息どころか日本を含めた国際社会を再び引きずり込む懸念すらある。(ワシントン・金杉貴雄、バンコク・岩崎健太朗)

◆ベトナムの再現

 米メディアは15日、首都カブールの米大使館上空を飛ぶ米軍ヘリの映像を一斉に流した。1975年のベトナム戦争末期、サイゴン(現ホーチミン)の米大使館から館員がヘリで逃げるように脱出したシーンを彷彿とさせたからだ。
 米軍の完全撤収はトランプ前政権が決め、バイデン政権も踏襲した。バイデン氏は「最長戦争」の泥沼を終わらせ米兵を故郷に戻すことは、来年の中間選挙に向け国民の支持を得られると判断したためだ。
 しかしタリバンは今月6日に一斉に州都への進攻を開始すると、わずか10日で首都を制圧。予想を大きく超える展開に、ベトナム戦争敗北以来の屈辱だとバイデン政権に対して批判が噴出。ブリンケン米国務長官は15日、米主要メディアに相次いで出演した際、「これはサイゴンではない」と繰り返し反論した。

◆110兆円空しく

 バイデン氏は7月、「米国はアフガン政府軍30万を訓練し、高度な装備を提供した。その能力を信頼している」と力説。アフガン政府軍がタリバンに対抗できると自信をみせていた。米国はアフガン政府軍構築に10兆円近く投じてきたとされ、アフガン全体ではバイデン氏は1兆ドル(約110兆円)を費やしたと明らかにしている。
 結果的に莫大な投資は無駄になった。軍事専門家は、タリバンの巧妙な戦略と政府軍の著しい士気の低下があったと指摘。イスラムの大義や報復の恐怖で住民に浸透してきたタリバンに対し、政府軍は自立心や統率力も欠如しており、寝返りでタリバンが増強したという。米紙ニューヨーク・タイムズによると、アフガン政府部隊は書類上30万人だったが、実際にはその6分の1ほどしかいなかったことが最近明らかになった。

◆テロの脅威再び?

 アフガン戦争は、米中枢同時テロを起こした国際テロ組織アルカイダへの報復のため、アルカイダをかくまったタリバンを米国が攻撃し始まった。アルカイダの指導者だったビンラディン容疑者こそ殺害したが、テロの温床と位置付けたタリバン政権は、一度は崩壊したものの復活する。
 アフガン在住の政治アナリストのニザム・レザイ氏は「各地の制圧では残虐行為が伝えられている」と述べ、女性の権利や教育、表現の自由などが再び否定されるのではとの懸念は強い。タリバンのシャヒーン報道官は15日、英BBC放送の取材に「『女性が1人で外出すると殴られる』という話は事実ではない」と話し、懸念払拭に躍起だ。
 再びテロの温床となるのか。米メディアによると、米軍トップはタリバン政権のもとでテロ組織の再建が加速するとの見方を議会幹部に伝えた。

関連キーワード


おすすめ情報

国際の新着

記事一覧