旧海軍の駆逐艦「菊月」を3DやVRで継承 来年には慰霊碑を建立へ

2021年8月17日 12時00分

「VR菊月」のスクリーンショット=駆逐艦菊月会提供

 コロナ禍で慰霊の催しが難しい中、太平洋戦争で沈んだ旧海軍の駆逐艦「菊月」の戦友会が、インターネットでの情報発信や新技術を活用し、事実の継承に力を入れている。船体を立体的に見られる3DやVR(仮想現実)の映像を制作。ネットで募った支援金で来年には慰霊碑を東京・浅草の寺に建立する計画も進めている。(奥野斐)

船体の一部が海面上に出ている駆逐艦「菊月」=駆逐艦菊月会提供

 菊月は1942(昭和17)年5月、南太平洋ソロモン諸島ガダルカナル島の近海で、米軍の攻撃を受けて大破。乗組員ら12人が戦死した。現在は浅い海に着底しており、海面上で確認できる唯一の旧日本海軍の戦闘艦とされる。
 戦友会の「駆逐艦菊月会」は元乗組員の遺族、有志ら11世帯で構成。4年ほど前から、ホームページや会員制交流サイト(SNS)で菊月に関する発信や遺族の情報収集をしてきた。
 昨年12月には3DとVRコンテンツを公開。特に若い世代がネットで菊月の船体を目にし、全てを破壊する戦争のむなしさを確認してほしいと企画した。3Dはネット上で無料公開し、VRは500円でダウンロードできる。

3Dで再現された駆逐艦「菊月」=駆逐艦菊月会提供

 会長の橋本泰邦さん(53)=東京都=は10年ほど前、祖父が菊月の乗組員だったと知った。ツイッターで遺族を探していた愛知県の堀江仁貴さん(28)と知り合い、会に参加。橋本さんは「子どもが生まれ、自分のルーツに関心を持つようになった。戦争の事実、菊月の存在を幅広い世代に知ってほしい」と話す。
 堀江さんは、学生時代にネット上で見た現存する菊月の姿に衝撃を受け、情報収集を始めた。ソロモン諸島も訪れ「遺族と連絡を取り、慰霊の気持ちをつなげていきたい」との使命感が生まれたという。
 同会は、沈没から80年になる来年に慰霊碑を建立しようと、クラウドファンディングで支援を募り、300万円余が集まった。
 慰霊碑は、ソロモン諸島方面の従軍者や遺族らでつくる「全国ソロモン会」の事務局がある寿仙院(東京都台東区)に建てる計画。崎津寛光住職(49)は「国内外の慰霊碑の維持管理が難しくなる中、祈りをささげる場所として建立してもらえたら」と協力した。
 橋本さんは「戦争体験者が高齢化した今、事実を語り継ぐ重要性を感じている。菊月を3DやVRで知ってもらうと同時に、慰霊の場もつくり、後世に伝えていきたい」と語る。
 来年5月には慰霊碑の除幕式を行う予定で、駆逐艦菊月会では元乗組員の遺族らに参列を呼び掛けている。問い合わせは、同会幹事の堀江さん=090(1299)3019=へ。

駆逐艦「菊月」の慰霊碑建立について話す駆逐艦菊月会の橋本泰邦会長(左)と寿仙院の崎津寛光住職=東京都台東区の寿仙院で(市川和宏撮影)

関連キーワード

PR情報

社会の新着

記事一覧