デルタ株猛威を甘く見た首相 「ワクチン一辺倒」批判受けるも「世界中で猛威」と開き直り

2021年8月18日 06時00分
 新型コロナウイルス感染の急拡大が止まらず、政府は緊急事態宣言の対象地域の追加と期間延長という新たな対応を決めた。菅義偉首相の言動を振り返れば、デルタ株の感染力を甘く見たのは明らかだ。ワクチン頼みの対策では感染拡大を抑えきれず、国民に外出自粛などの協力を呼びかける発信力も弱まっている。(井上峻輔)

◆新たに「三本柱」のキャッチフレーズ

 首相は新たな対応を決定した17日の政府対策本部で「医療体制の構築、感染防止の徹底、ワクチン接種を3本の柱として対策を進めていく」と表明。初めて「三本柱」の枠組みを示した。
 これに先立ち、政府の基本的対処方針分科会の会合が開かれ、尾身茂会長は終了後、記者団に「ワクチンは非常に強い対策の柱だが、それだけでは現状は乗り越えられない」と強調。外出機会の5割減や医療体制の強化、さらには個人の行動制限に関する法的枠組みの検討という強い措置の必要性を挙げ「一つだけで全てが解決するのではなくて、総力戦だというメッセージを出してほしい」と政府に求めた。
 政府の対策にはワクチン一辺倒との批判も出ており、首相は三本柱という新しいキャッチフレーズを持ち出したとみられる。

◆前回の宣言で「最後の覚悟」

 もともと、首相が7月8日に東京都に4度目の緊急事態宣言発令を決めたのは「先手先手の予防的措置」との位置づけ。前倒し解除の可能性にも言及した。高齢者へのワクチン接種が進めば、新規感染者数が多少増えても重症者数は増えないと見込んでいたためだ。
 7月30日には8月末までの宣言延長を決めたが、「ワクチン接種が広がって感染が落ち着く」(政府関係者)と見込んでの延長幅だった。首相は当時の記者会見で「今回の宣言が最後の覚悟」と言及した。
 目算は外れ「感染拡大とワクチン接種のスピード競争」(西村康稔経済再生担当相)は感染力が大きく先行。首相は16日、記者団に政府対応の問題点を問われると「デルタ株は猛威を振るっていて、世界全ての国でそうした状況ではないか」と開き直った。

◆政府のコロナ対応 6割以上「評価しない」

 宣言は、期待したほど人出の減少につながっていない。度重なる発令と延長による「宣言慣れ」に加え、東京五輪開催が国民に感染防止を呼び掛けることと矛盾し「逆のメッセージになった」(共産党・塩川鉄也衆院議員)との見方は多い。尾身氏も「人流という意味では、五輪が人々の意識に与えた影響はあったと思う」と指摘する。
 しかし、首相は因果関係を否定し続けた。24日に開幕が迫るパラリンピックも「開催ありき」の姿勢を堅持。17日の参院議院運営委員会では、野党から中止を求める声が上がったのに対し、西村氏は「無観客にするなど感染を徹底的に抑えた形で開催すると承知している」と明言した。
 首相はワクチンを切り札と位置付け、会見などでも接種実績を強調してきた。だが、共同通信が14~16日に実施した世論調査では、67.8%が政府のコロナ対応を「評価しない」と回答。就任間もない昨年10月の41.6%から上昇し続け、首相の発信が国民に響かなくなっていることを示している。

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