特養の食費負担 大幅増 制度見直し 低所得者への補助減 年収120万〜155万円が対象

2021年8月18日 07時38分
 特別養護老人ホーム(特養)などの介護保険施設で今月から、一部の利用者が支払う自己負担額が大幅に増えた。制度の見直しで、低所得者への補助が減額されたためだ。国は「負担の公平性と介護保険の持続可能性を高めるため」と理解を求めるが、対象者の家族らからは困惑の声も上がる。 (佐橋大)
 「食費が倍以上になる。納得いかない」。岐阜県内の特養に父親(82)が入居しているという女性(54)は不満をあらわにする。特養に支払う食費が一日あたり六百五十円から千三百六十円に。三十日分の月額は一万九千五百円から四万八百円へと、先月より二万円超も増える計算だ。
 父親は二十年以上前に脳血管の病気で倒れた。母親(78)はうつ状態になり、女性は介護のために離職。父親は九年前から特養で暮らすが、女性は長年の在宅介護で疲れが蓄積し、今も就労できない。病気で休職中の弟を含む一家四人の収入の柱は、月十二万円台の父親の年金。今月以降、特養の費用だけで十二万円以上かかることになり、女性は「医療費次第で父の生活にかかる費用が年金額を上回ってしまう」と気をもむ。
 特養や老人保健施設、介護療養型医療施設などでは、介護保険サービスの利用料(原則一割負担)に加え、食費と部屋代(居住費)が原則自己負担だ。ただ、世帯の全員が住民税非課税で、預貯金などの資産が基準以下などの条件を満たせば「補足給付」という補助が受けられる。補助額は本人の年金などの収入や預貯金の額によって決まる。
 その補助の収入基準は今まで、単身世帯の場合は▽生活保護受給者などの第一段階▽年収八十万円以下の第二段階▽年収八十万円超から百五十五万円以下の第三段階▽対象外となる住民税課税世帯の第四段階−に分かれていた。今回の見直しは、預貯金の上限を引き下げた上で、第三段階を年収百二十万円以下の(1)と、百二十万円超の(2)に分け、(2)の補助額を減額。対象者は月約二万円の負担増になった=図。増加幅について、厚生労働省の担当者は「(1)と第四段階の差の半分になるようにした」と説明。夫婦二人の世帯(配偶者控除あり)の場合、第三段階(2)に該当する収入の上限額は、本人か配偶者の多い方で年二百十一万円となる。
 介護保険などの社会保障制度を研究する淑徳大(千葉市)教授の結城康博さんは「ケアプラン作成の有料化などが見送られた中、介護事業費の抑制策として選ばれたのが今回の負担増」と指摘。「老夫婦の世帯では入所していない人の生活が厳しくなる。生活を切り詰めるか、預貯金を崩すか、子どもからの仕送りを増やすしかない人もいるだろう」と影響を懸念する。
 東海生活保護利用支援ネットワーク(名古屋市)事務局長の稲葉健一さんは「年金などの収入があっても、国が定める最低生活費を下回っていれば、生活保護を受けられる可能性がある。生活が苦しければ、自治体の窓口に相談を」と呼び掛ける。同ネットワークも毎週火、木曜の午後一〜四時、弁護士や司法書士らによる無料の電話相談=電052(911)9290=を受けている。

関連キーワード

PR情報

シニア・介護の新着

記事一覧