<社説>続く豪雨災害 もう想定外は通じない

2021年8月18日 07時40分
 西日本を中心に記録的な大雨が続いている。日本列島の南北に鎮座した二つの高気圧に前線が挟まれて停滞し、十一日の降り始めからの雨量が九州で年間降雨量の四割強に相当するなど、過去の常識が通じない水準だ。前線は二十日ごろまで列島に停滞する見込みで、なお気は緩められない。
 河川の氾濫や、長雨で緩んだ地盤が崩壊し、犠牲者も出ている。長野県岡谷市では十五日早朝、崩れた山の土砂が民家を直撃し=写真、母子三人が亡くなった。
 民家は土砂災害警戒区域に位置し、市は「避難指示(レベル4)」の前段階に当たる「高齢者等避難(レベル3)」を発令していた。その判断の難しさは言うまでもないが、雨が降り続いた土砂災害警戒区域で、レベル3に据え置いたまま人命が奪われる構図は、七月に起きた静岡県熱海市の土石流災害と同じだ。妥当性は今後、綿密な検証が求められる。
 こうした災害の度、「想定外の雨量だった」との釈明がなされるが、昨今は二〇一四年の広島や一八年の西日本など、ほぼ毎年、甚大な豪雨災害が起きている。もはや「想定外だった」は通じないのではないか。
 豪雨は大量の水蒸気を吸い込んだ積乱雲や、その集合体である「線状降水帯」がもたらす。地球温暖化に伴って大気中の水蒸気量は増加しており、「『数十年に一度』や『百年に一度』のような大災害は今後も、毎年のように起き得る」と坪木和久・名古屋大教授(気象学)は警告する。
 異常気象が「日常化」しつつあることを考えれば、既にフェーズは変わったとみるべきだ。自治体は従来の経験値を離れ、防災計画や、避難指示などを出す基準、ルールも改めるべき時期に来ているのではないか。
 気象庁は六月、観測船を使い海上の水蒸気量の調査を始めた。こうしたデータなどを基に、坪木教授は豪雨の発生を「十二時間前には予測できるよう精度を高めるべきだ」と語る。命を守るため、避難までの時間的な余裕が求められるからだ。官学挙げ、過酷化する現実に対処していくほかはない。

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