<西新井新聞>お参りのお供に 草だんご列車でGO!! コロナ禍の参道 深緑色タッグ

2021年8月20日 07時10分
 62もの区市町村がある東京。担当記者が「編集長」になって一つの街を掘り下げる。

「草だんご列車」で地域を盛り上げたいと話す東武西新井駅長の神崎和幸さん=足立区の東武大師前駅で

 西新井駅と大師前駅のわずか1キロを結ぶ東武大師線。ここを走る深緑色の車体が昨年11月、「草だんご列車」を名乗り、地元のPRを始めた。西新井大師(足立区)の参道名物・草だんごの色にそっくりだからだ。コロナ禍で参拝客が減少し、窮地に立たされた地元の一助になるよう、エールを送る。
 大師線の終点・大師前駅は立派な無人駅だった。アーチ状の高い天井に覆われた広いホームから寺の屋根が見える。駅員のいない改札を抜けると、参道はすぐそこ。青みがかった深緑色で二両編成のワンマン列車がホームにゆっくり入ってきた。西新井駅長の神崎和幸さん(53)は「草だんごの色に似ている、と駅員同士で話題になったのがきっかけです」と紹介。若手時代にも西新井駅に勤務していた神崎さんにとって、草だんごは思い出の味だという。
 両駅で手作り感満載のポスターやチラシで参道名物の草だんごを販売する三店舗を紹介。今年十二月の大師線開業九十周年に向けて、イベントも検討している。
 地元の人が「お大師さま」と呼ぶ西新井大師は、弘法大師(空海)が平安時代に開基したとされる寺。参道で売られる草だんごは、弘法大師がヨモギを煎じ、病人に飲ませると回復したという伝説から、西新井大師名物となったという。正月はもちろん、風鈴祭りや四季折々の花が咲き誇る境内は多くの人でにぎわい、参道は店の売り子の明るい掛け声が響いていた。

田口屋菓子舗 田口美恵子さん

 だが、コロナを機に様相は一変する。祭りは軒並み中止になり、昨年度の大師前駅の一日の平均乗降人員は一万八百四人で前年度から約三千人減少した。昭和十四(一九三九)年創業の田口屋菓子舗の社長、田口美恵子さん(68)は「お嫁に来て約四十年。正月には向かいのお店が見えなくなるくらい人波が押し寄せるけど、今年は初めて様子が見えた」。その向かいの店は、昨年九月に閉店に追い込まれた老舗「割烹(かっぽう) 武蔵屋」。跡地には新たなビルが建設中だった。「やめる店が出るからこそ、続けなきゃという気持ちが強くなる」
 山門前で、元禄二(一六八九)年には営業していた「割烹 清水屋」。だんご販売担当の清水敏子さん(74)は「そもそも名物だと知らない人もいるので、草だんご列車と呼び続けてほしい」と笑顔。

清水屋 清水敏子さん

 その真向かいも草だんごを売る文化二(一八〇五)年創業の中田屋。店主の兼子忠さん(38)は「お互いライバルだけど、地域をよくしたいのは同じ。列車企画で気持ちが一つになれるのでは」と話す。

中田屋 兼子忠さん

 地元の人の思いを乗せて走る草だんご列車。東武鉄道によると、大師線は四色の車両があり、深緑の草だんご列車は週に約三回、十分間隔で運行している。

◆西新井

 西新井がある足立区の人口は69万829人(8月1日現在)で、総面積約53平方キロは23区で3番目の広さ。東京の最北端にあり、自然や下町風情が残る一方、東京芸術大学など6大学の進出や、つくばエクスプレス、日暮里・舎人ライナーの新線開通などで、変貌中。
★西新井駅のホームには、立ち食いそばならぬ立ち食いラーメン店がある。東武鉄道によると、駅ラーメンは春日部駅にもある。
★「西新井」の「西」は何の西? 平安時代、弘法大師がこの地を訪れ、悪疫流行に悩む人々を救おうと、自分自身の像を彫り、枯れ井戸に安置して祈願。すると水が湧き、病が平癒したと伝えられる。その井戸が、西新井大師のお堂の西側にあったことが名前の由来という。

駅のホームにある立ち食いラーメン屋=東京都足立区の東武西新井駅で

◆編集後記

 取材で食べ続けた草だんご。もっちり食感の中田屋、濃厚なこしあんの清水屋、風味ゆたかな田口屋−。三店舗とも味や食感はそれぞれ異なり、どれも美味。しかし、いずれも通販はしていない。田口美恵子さんは「お大師さまにお参りした後に食べてこその草だんごですから」と話していた。お参り含めての、草だんごの味。どうかコロナ禍を戦い抜いてほしいと願う。
 文・山下葉月/写真・木口慎子
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