法整備で個人の行動制限、病床確保を強制…『力』の感染防止策が浮上も実現へ課題多く

2021年8月21日 06時00分
 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず病床の逼迫が続く中、専門家や政府では、法整備により「ロックダウン(都市封鎖)」に近い形で個人の行動を制限したり、病床確保に強制力を持たせたりする案が浮上している。ただ、私権制限への懸念は根強いなど課題は多い。具体策も示されておらず実現にはほど遠い。(村上一樹、大野暢子)

衆院内閣委の閉会中審査で答弁する政府分科会の尾身茂会長(手前)

◆尾身氏「新たな法的仕組み構築を」

 緊急事態宣言が長引き、外出自粛要請では人出が減らなくなっている。17日の政府の会合では、専門家から個人の行動制限を可能にする法整備が必要との意見が相次いだ。政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長は17日の記者会見で「新たな法的仕組みの構築も必要」と指摘した。
 2月に成立した新型コロナ対策の改正特別措置法では、休業や営業時間短縮の命令に従わない飲食店などへの罰則が導入されたが、店を利用する個人に対して強制力を伴う措置はない。
 緊急事態宣言下では、知事が住民に外出しないよう要請できるが、罰則はない。罰則などを伴う強制力を持たせることは、憲法が保障する「移動の自由」の制約につながるため、政府内でも慎重論が根強い。菅義偉首相は「世界で外出禁止に罰金をかけても、守ることができなかった」と、効果にも疑問を示す。

◆首相は病床確保への法整備に前向きが

 加藤勝信官房長官は19日の会見で「罰則の実効性の確保等、さまざまな課題がある」と話した。
 一方、病床確保の法整備については、首相が17日の会見で意欲を示したが、具体的な改正内容は「これから検討」(加藤氏)という状態だ。
 そもそも現行法が十分に活用されているとは言い難い。2月成立の改正感染症法は、自治体から医療機関に対し、コロナ医療への協力を求めやすくした。医療機関が正当な理由なく要請に従わなかった場合、より強力な「勧告」を出し、勧告を拒否した医療機関を公表することも可能にした。

◆要請止まり

 しかし、厚生労働省によると、これまで要請を行ったのは大阪、奈良、静岡、茨城の4府県と札幌市。いずれも要請にとどまり、勧告や公表はしなかった。
 静岡県は10日、県内の約170カ所の医療機関に対し、重症・中等症の病床提供を要請した。同県の担当者は、医療機関が要請を拒否できる「正当な理由」の定義があいまいなため、勧告や公表に踏み込みづらいと指摘。「多くの場面で『人がいないから』と断られている」と明かした。
 田村憲久厚労相は20日の会見で、病床確保の法整備について「検討しなければならないが、人が足りなければ受け入れは無理な話だ」と語った。

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