東京パラリンピックの無観客開催 障害者スポーツ団体に打撃 助成金依存の脱却目指したが…

2021年8月21日 21時00分

東京パラリンピック日本代表の結団式で、写真撮影に臨む国枝慎吾主将(左から3人目)。「開催されるだけで奇跡的なこと」と語っていた=17日、東京都港区で

 東京パラリンピックは学校単位の観戦を除き、観客を入れずに開催する。新型コロナウイルス感染症拡大防止に向けて安全を最優先した一方、国などの助成金に依存する体制からの脱却を目指してきた障害者スポーツ団体の落胆は大きい。専門家は「現地観戦の魅力を伝えられず、どこまで競技の発展につなげられるか」と危機感を抱く。(原田遼、神谷円香)

◆「開催されるだけで奇跡」

 「次の日には学校で話題が持ちきりになるようなプレーをしたい」。17日に開かれた日本代表結団式。テレビで高視聴率を記録した東京五輪を例に、選手団主将で車いすテニスの国枝慎吾選手は意気込んだ。同時に「開催されるだけで奇跡的なこと。感謝しなければいけない」と、競技ができることへの喜びを語った。
 しかし無観客の代償は大きい。「義足の幅跳び選手による8メートルのジャンプ、ブラインドサッカー選手のドリブル技術、ゴールボールの静寂、車いすバスケでタイヤが焦げるにおい…」。笹川スポーツ財団スポーツ政策研究所の小淵和也政策ディレクターはパラスポーツを現地で観戦する魅力を挙げながら、「パラの競技団体にとって無観客の影響は、一定の競技者やファンを持つ五輪競技に比べてはるかに大きい」と話す。
 かつて障害者スポーツは福祉の側面が強く、大会を開いても観客は家族や知人などわずかだった。競技団体の活動資金は乏しく、多くを国などからの助成金に頼っていた。

◆収益源「ファンの受け皿どこまで作れるか」

 その転機となったのが、2013年のパラリンピック招致決定だ。各競技団体は大会を起爆剤にしようと、スポンサーの獲得に加え、ブラインドサッカーでは国内で開催された国際大会のチケットを有料化させるなど、新たな収入源を探る試みも活発化。パラリンピックの競技チケットは最高7000円の価格が設定され、コロナ禍前に97万枚が売れるなど好調な売れ行きだった。
 小淵さんは「障害のある方が観戦し、競技を始めれば競技団体への登録者が増える可能性がある。健常者も『お金を払っても観に来る価値がある』と感じれば、有料の大会も増えていく。競技団体の運営を安定化させる転換期になると期待されたが…」と悔しがる。
 大会は一転、原則無観客となり、機運がしぼみかねない。小淵さんは「メディアはどこまで競技の素晴らしさを臨場感を持たせて報じられるか、競技団体はテレビなどを通じて魅力を感じてくれた人の受け皿をどこまで作れるか」と課題を挙げた。
 結団式に出席したトライアスロンの谷真海まみ選手は「コロナ禍が落ち着かないと実現しないが、大会に出場した選手たちが子どもたちと交流していくことが欠かせない」と普及活動の継続を誓った。

おすすめ情報

原田遼記者の新着

記事一覧