<ひと物語>ペット防災、考えよう 猫の避難用ケージを姉妹で開発 山下初子さん、元山信子さん

2021年8月23日 07時39分

ペット防災の大切さを訴える山下さん(左)と元山さん姉妹=いずれも草加市で

 ヒト二人、イヌ一匹に対し、ネコが三匹。山下初子さん(60)と元山信子さん(55)の姉妹にとって、家庭の最大勢力は猫だ。壁掛け時計の形から、座布団の模様まで猫。二人で暮らす部屋の装飾からは、猫への深い愛情が伝わってくる。
 そんな「家族の一員」と災害に見舞われたら、一緒に避難できるのか−。飼い主としての問題意識から二〇一九年三月に草加市で会社「猫のとびら」を立ち上げ、猫の避難用ケージを独自に開発。「ペット防災」の大切さを訴えている。
 姉妹は会社勤めや主婦のかたわら、飼い主がいない猫を引き取って育ててきた。同時に、その何倍もの猫たちが捨てられたまま殺処分されている現実に「同じ一つの命なのに…」と胸を痛めてきた。
 人間の都合が優先されるのは災害時もそう。一一年の東日本大震災では猫や犬が自宅に取り残され、避難所への受け入れを拒まれる事例が相次いだ。山下さんは「ペットを守ってあげられず、心に傷を負った飼い主さんも少なくなかったと知った」と振り返る。
 その教訓から、環境省は一三年に災害時のペット対策をまとめたガイドラインを策定。飼い主との「同行避難」が原則であると初めて明記した。
 避難のためにはペットを入れるケージが必要になる。でも、市販品は金属製で重く、組み立てに苦労するものばかり。「ないなら作っちゃおう」。ものづくりは二人とも素人だったが、意を決した。

姉妹が2年がかりで開発したケージ「いっしょに避にゃん」

 利用者目線で素材に選んだのが、軽くて丈夫なプラスチック段ボール。重さを三キロに抑え、女性でも持ち運びやすい。折り畳み式で、工具を使わず一分もあれば組み立て可能だ。外から見えない構造で猫のストレスを減らす一方、光を入れ、通気性を確保する窓もつけた。
 「いっしょに避にゃん」と名付けて一九年末から売り出した。ネット通販のみで価格は一万九千八百円と高めだが、岐阜県内の自治体が避難所に置くために採用してくれた。今後さらに軽量化も目指している。
 二人は同行避難の情報発信にも力を入れ、会社のホームページで埼玉県と東京都の自治体の受け入れ態勢をまとめて紹介。防災セミナーも定期的に開く。
 災害は毎年のように繰り返される。猫をケージに慣れさせる練習、水や餌の備蓄、避難所の確認…。飼い主が準備しておくべきことは多いが、それが命に直結する。「ペットの命を守ることは、飼い主を救うことにつながる」。二人はそう信じ、活動を続ける。(近藤統義)
<やました・はつこ> 愛媛県生まれ。猫のとびら代表。会社名に「全ての猫に暖かい家の中にいてほしい」との思いを込めた。姉妹で草加市在住。
<もとやま・のぶこ> 川口市生まれ。猫のとびら副代表。3匹の飼い猫はくり(♀)、まる(♂)、クロ(♀)。問い合わせは同社=電048(954)4652=へ。

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