東京五輪での日韓のあつれきは誤解で生じた…選手団副団長を務めた在日韓国人3世・崔潤氏

2021年8月23日 17時00分
 在日韓国人3世で大韓ラグビー協会会長を務める崔潤チェユン氏(57)=OK金融グループ会長=が、今夏の東京五輪に韓国選手団の副団長として参加した。新型コロナウイルスの影響で無観客となり、日韓のあつれきも浮かび上がった今大会を振り返るとともに、日韓関係についても語ってもらった。 (ソウル支局・中村彰宏)

◆賛否両論あったが、開催できて良かった

 新型コロナが収まらず、賛否両論があった東京五輪。難しい決断だったとは思いますが、選手団の立場としては開催できて本当に良かった。選手たちの5年間の努力が無駄にならなかったのですから。
 生まれ育った日本で開かれる五輪に、祖国の韓国選手団の一員として参加できたというのは夢のようなことです。無観客で外出も制限され、毎日、選手村と競技場を往復して応援しました。観客がいないので競技に集中できる半面、大歓声に包まれる興奮は味わえませんでしたね。

アーチェリーで金メダルを獲得した金済徳選手(中央)と写真に収まる崔潤副団長(左端)=東京で、崔潤氏提供

 心に残ったのは、韓国が金メダルを獲得したアーチェリー。東京の空に太極旗が掲げられた場面は、自然と涙が出ました。柔道では在日韓国人の安昌林アンチャンリム選手が銅メダル。同じ境遇の安選手に自分を重ね、本当にうれしかった。自分自身が高校時代からやってきたラグビーは初出場。全敗でしたが、ここからがスタートです。コロナ禍でも選手や関係者をもてなそうと一生懸命に笑顔で仕事をこなすボランティアの姿にも心を打たれました。

◆日韓関係悪化で敏感になり過ぎている

五輪選手村の居住棟に掲げた韓国の応援幕を撤去する関係者=7月17日(AP)

 五輪が日韓関係の改善につながればと期待していたのですが、逆に摩擦を生んでしまったのは残念です。選手村の応援幕や給食センターの問題は、どちらも誤解がありました。応援幕は純粋に選手を激励するメッセージで、政治的に日本を刺激する意図は全くなかった。給食センターを設置したのも福島産の食材を避けるためではありません。2004年のアテネ五輪から続けてきたことです。
 それだけ現在の韓国と日本の関係が悪化し、互いに敏感になり過ぎているのだと思います。02年に共催したサッカー・ワールドカップでは、互いに応援し合い、スポーツを通じて両国の関係が良くなった。あの時のような関係に戻らないといけません。
 東京五輪では、在日韓国人の私が両国の懸け橋になることが使命だと、できるだけ多くのスポーツ関係者に会って関係を築くつもりでしたが、新型コロナのためにできず、本当に残念でした。在日韓国人を集めて韓国と日本を応援する企画もあったのですが、これも実現できず心残りです。
 韓国のスポーツ界にとっては、東京五輪は転機になるでしょう。メダル数は目標に届きませんでした。テコンドーや柔道、レスリングなど得意としていた競技も世界のレベルが上がり、新種目も増えている。韓国の少数精鋭の選手育成に限界を感じました。
 まず底辺を拡大し、その中から国際舞台で戦える選手が生まれてくる。日本のように、子どもたちが生活の中でスポーツを楽しめる環境が必要です。これからもスポーツ振興に力を入れ、韓国スポーツ界の役に立ちたいと思っています。

 チェ・ユン 1963年、名古屋市生まれ。名古屋学院高(現名古屋高)でラグビーを始め、名古屋学院大時代は在日韓国人のクラブチーム「愛知闘球団」でプレーした。飲食店経営などを経て99年に韓国移住。金融業を始め、2004年にOK金融グループ会長に就任。プロバレーボールチームのオーナーを務めるなどスポーツ振興に尽力し、大韓ラグビー協会会長に今年、就任した。


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