藤井聡太王位が初防衛 第1局黒星からの4連勝 豊島竜王との熱戦、7番勝負を振り返る

2021年8月25日 20時17分
 将棋の藤井聡太王位(19)が豊島将之竜王(31)を4勝1敗で破って2連覇を果たした、お~いお茶杯第62期王位戦7番勝負(東京新聞主催、伊藤園特別協賛)。「序盤の豊島、終盤の藤井」という開幕前の予想通り、両者が持ち味を発揮した。ハイレベルな応酬が繰り広げられた今シリーズを、ダイジェストで振り返る。(樋口薫)

◆第1局 「こんな負け方は記憶にない」

王位戦第1局では、完璧な内容で豊島将之竜王が先勝した=6月30日、名古屋市中区の名古屋能楽堂で

 「いつもの藤井王位じゃない」「こんな一方的な負け方は記憶にない」。名古屋市で開幕した第1局(6月29、30日)。控室を訪れた棋士たちは、一様に驚きの表情を見せた。後手番の豊島竜王は序盤の細かな動きでポイントを稼ぎ、2日目午前の段階で既に勝勢となっていた。
 普段は敗局でも逆転を狙い、持ち時間がなくなるまで粘る藤井王位が、初めて1時間半以上の時間を残して投了した。感想戦で封じ手以降の検討はされず、藤井王位が後日「熱戦にできず、見ているファンの方々に申し訳なかった」と反省するほどの大差だった。開幕前の時点で、藤井王位は豊島竜王に公式戦で1勝6敗と、唯一大きく負け越していた。開幕局での完敗に「やはり相性が悪いのか」との声も漏れた。

◆第2局 猛烈な追い込み、逆転勝ち

第2局で逆転勝ちを収めた藤井聡太王位。今シリーズのターニングポイントとなった=7月14日、北海道旭川市の花月会館で

 転機となったのが、北海道旭川市での第2局(7月13、14日)だった。封じ手前、豊島竜王に機敏な一手が出て、1日目の段階で立会人の広瀬章人八段(34)は「豊島さんがわずかにリードしたのでは」と指摘した。豊島竜王は深い研究に基づく序盤力が特に高く評価されており、全局を通じてその力を遺憾なく発揮した。
 しかし2日目、藤井王位は決め手を与えない粘りの指し回しで盤面を複雑化。決めに出た豊島竜王の攻めをぎりぎりでしのぎ、猛烈な追い込みで逆転勝ち。投了前、何が悪かったのかを振り返るように豊島竜王が宙を見上げる姿が印象的だった。広瀬八段は「豊島竜王の理想的な展開だったが、それでも勝ち切れないのが藤井王位の終盤力のすごみ」と絶賛した。

◆第3局 「終盤の指し手は完璧」

 神戸市の有馬温泉での第3局(7月21、22日)も、封じ手の局面では「自信がなかった」と藤井王位。しかし2日目午前、豊島竜王に逸機があったのに対し、藤井王位は馬を切って踏み込むと一気に寄せ切った。「終盤の藤井王位の指し手は完璧だった」と立会人の谷川浩司九段(59)はうなった。

◆第4局 長期戦の末、的確な攻め

 4週間を空けての第4局(8月18、19日)は大雨の影響で、直前に佐賀県嬉野市から大阪市の関西将棋会館へと対局場が変更。両者一進一退のじりじりした長期戦の末、ついに藤井王位が先手の堅陣に襲いかかった。攻めがつながるかが焦点だったが、藤井王位の大駒を切っての攻めは的確で、先手玉を瞬く間に受けなしへと追い込んだ。

第4局に勝ち、防衛に王手をかけた藤井聡太王位=8月19日、大阪市福島区の関西将棋会館で

◆第5局 長考合戦から十分の展開に

 そして徳島市での第5局(8月24、25日)。1日目は長考合戦となったが、先手の藤井王位が十分の展開に。2日目午前になり、豊島竜王に痛恨の落手があり、中盤で銀得となった藤井王位が押し切り、王位防衛を果たした。
 第5局の立会人の深浦康市九段(49)は「第2局以降、藤井王位が豊島竜王の積極的な指し回しを受けて立つのでなく、逆にそのスピードに合わせて主導権を狙いに行ったのが印象的。結果的に第2局の終盤で藤井王位が競り勝ったのが大きかった」と総括した。

「お~いお茶杯第62期王位戦」で初防衛を果たし、会見で笑顔を見せる藤井聡太王位=徳島市内のホテルで

◆藤井王位「自分に足りない部分見つかった」

 終局後、藤井王位は「勝った将棋も苦しい場面が長く、内容的には押されていたと思う。番勝負で自分に足りない部分が見つかったので、今後に生かしていきたい」と、謙虚にシリーズを振り返った。豊島竜王は「中盤戦の難しい局面でなかなかいい手が指せなかった。競ったスコアにできず、楽しみにしていた方々に申し訳なく思う」と敗戦の弁を述べた。

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