井の頭池 水草の闘い 外来種が勢力拡大 「モネの池」ピンチ

2021年8月26日 07時14分

17日に井の頭池で行われた除去作業では3時間でおけ100杯以上のコカナダモが搬出された(認定NPO法人生態工房提供)

 二〇一九年の初夏、美しい池の様子が「モネの池」などと話題となった都立井の頭恩賜公園内の井の頭池(三鷹市)。この景観を生みだしたのが、「かいぼり」を経て復活した絶滅危惧種の水草「ツツイトモ」だが、その生育を脅かす外来種の水草「コカナダモ」が勢力を拡大していることが、公園を管理する都建設局西部公園緑地事務所の調査で分かった。「爆発的な繁殖」との声もあり、近く専門家たちと対応を議論する。

武蔵野、三鷹両市にまたがって広がる井の頭恩賜公園=今年6月、本社ヘリ「あさづる」から

 調査は、事務所が委託した環境調査会社が毎年五〜八月に実施している潜水による目視調査。池を二十メートル四方に区切り、ツツイトモとコカナダモの群生がどれだけ覆っているかの割合「被度」をデータ化して池全域の地図に落とし込んでいる。例えば、割合が75〜100%の場合は被度を最高位の「5」としている。
 それによると、ツツイトモが池のほぼ全域で繁殖が確認された一九年六月に比べ、今年六月はその六割程度まで勢力が小さくなった。一方、一九年六月は池の数地点で確認されただけだったコカナダモは昨年から繁殖範囲を池全域に広げ始め、今年六月時点ではツツイトモの約三分の二に迫るまで勢力を拡大していることが判明した。
 事務所はコカナダモの増殖に手をこまねいていたわけではない。工事課長の永田雅之さんは「本来、井の頭池に存在しない種なので、他の生物や水質への影響を考慮しながら数をコントロールしていく必要がある」として一九年には三回、二〇年には十二回、二一年は五回、池で駆除作業を行った。直近の今月十七日の作業では、八人の作業員が三時間で大型のおけ百杯超のコカナダモを除去。作業をした認定NPO法人生態工房(武蔵野市)の佐藤方博(まさひろ)事務局長は「繁殖のペースに追いつけない」と話す。
 ツツイトモは春先に芽を出し、花が咲く六月ごろに全盛期を迎え、秋には姿を消す。一方、コカナダモの繁殖期間はもっと長い。永田さんは両者の生育サイクルのずれを指摘したうえで、「専門家の意見も聞き、在来種、生態系への影響がどの程度あるかを見極め、対策を講じたい」と語る。
 水生植物の生態に詳しい東京農工大学グローバル教育院講師、片桐浩司さんは「コカナダモは繁殖力が旺盛。池で勢力を広げるとツツイトモなど在来種が発芽できず、駆逐される恐れがある。池の酸素不足や水質悪化も心配だ。駆除には池底を干し上げるかいぼりが有効ではないか」とみる。
 悪役のコカナダモだが、池にすむ生き物のすみかになっている。池の水面ではスッポンが悠然と甲羅干しする姿がみられる。五〜七月にはツツイトモの上で、ツツイトモが姿を消した後はコカナダモの上を指定席にしている。

【ツツイトモ】水草の上で甲羅干しをするスッポン=2019年7月撮影

<ツツイトモ> 環境省レッドリストに掲載されている水草で、淡い緑色の線状の葉が特徴。井の頭池では、地下水のくみ上げなどの影響で湧水量が激減したことや外来魚の増加などで長年姿を消していた。2014年以降3回行われたかいぼりで水質浄化が進み、復活した。

【コカナダモ】=今年8月20日撮影

<コカナダモ> 茎から暗い緑褐色の葉が輪を描くように生える形状が特徴。環境省の生態系被害防止外来種リストで、甚大な被害が予想される「重点対策外来種」に選定されている。琵琶湖など各地の湖沼で大繁殖し、駆除作業が行われている。
 文・花井勝規/写真・花井勝規、伊藤遼
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