ホテルで「暮らす」 サブスクで新しい価値を提案 危機の宿泊業界を救う一手に<まちビズ最前線>

2021年8月29日 05時50分
 音楽や動画で定着する定額サービス「サブスクリプション」が、ホテル業界にもじわり広がっている。気軽に遠出できない日々だが、旅行気分を味わいながらホテルに「暮らす」という新たな価値観を提起。さまざまなサービスに、顧客らは業界の想定を超える新しい利用法を編み出している。(嶋村光希子)

渋谷の眺望が自慢のツインルーム=渋谷区の渋谷ストリームエクセルホテル東急で

◆帰る場所「ツギツギ」とめぐって

 東急(渋谷区)は4~7月にかけ60連泊(税込み36万円)、30連泊(同18万円)の2プランを提供した。北海道から沖縄まで39ホテルを追加料金なしで使える仕組み。プラン名は「ツギツギ」。「帰る場所を次々とめぐり旅するように暮らしてほしい」との思いからだ。
 各プランでそれぞれ50人、計100人の枠のところ、900人超の応募があった。担当者は「想像以上の反響だった」と驚く。今年秋、第2弾の募集も行う。

利用客と非接触でタオルなどの備品を届けてくれるデリバリーロボット=渋谷区の渋谷ストリームエクセルホテル東急で

◆単身者だけでなく夫婦や親子も多数

 利用した都内の30代男性は「ワーケーションとして仕事をしながら各地を巡ったが、環境が変わることで刺激があり、仕事にも良い影響が出た」。同社は当初、主な想定顧客はこうした単身者らとみていたが、実際には夫婦や親子らの利用が7割を超えたという。
 コロナ前の稼働率は8割を超えていたが、今年は4割を切り、依然苦境は続く。それでも担当者は、定額制で「新たな暮らし方への需要が掘り起こせると分かった」と利点を語った。

帝国ホテルの「サービスアパートメント」で使われる客室=同ホテル提供

◆苦境のコロナ禍、安定収益に期待

 老舗高級ホテルの帝国ホテル(千代田区)は、3月から「サービスアパートメント」を始めた。3~7月の99室は予約開始後、数時間で完売。7月からは新たに高層階の66室も追加した。30平方メートルの部屋で月額36万円。フィットネスやプール、サウナも利用できる。

帝国ホテルのサービスアパートメントではフィットネスも無料で使える=同ホテル提供

 同ホテルではコロナ以前からこうした長期滞在の業態を検討していたが、コロナ禍を受けて迅速に開始を決めたという。担当者は「旅行に行きたくても行けない人に好評」と話す。苦境に立つ宿泊業界だが「部屋の稼働率が上がり、安定収益も見込める」と経営面でのメリットも指摘する。

◆テレワークだけにとどまらぬ想定外の利用も

 利用の用途は事業者の想像を超え始めた。三井不動産(中央区)は今年2月から、定額の「サブ住む」を開始。1つのホテルに30連泊できるプランと、全国35施設から毎日好きなホテルに泊まれるプラン(現在終了)を用意した。
 当初、自宅とは別のテレワークの拠点としての利用を想定していた同社だが、担当者は「引っ越しの際の中期滞在や、出産を手伝う親族の宿泊など、こちらが『こういうニーズもあったか』という想定外の利用をしていただけた」と明かす。旅先で泊まるだけではない、ホテルの新しい使い方はさらに広がりそうだ。

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