真 東京03探検隊 江戸東京たてもの園 「時代を映す建築物の歴史的・文化的価値にふれる」(前編)

2021年9月8日 09時55分

お笑いトリオ“東京03”が、大人の好奇心を満たすディープな世界に飛び込む!


お笑いトリオ「東京03」のメンバーが、これまで知らなかった未知なる世界に足を踏み入れ、さまざまな新発見と出合う人気の連載。
考古学、芸術、科学、サブカルなど、あらゆる分野に触れて見聞を広め、“デキる大人”としてのたしなみを磨きます!
今回のテーマは「建築物」です。時代の流れとともに変化し、西洋の文化を取り入れながら発展してきた日本の建築史。昔から残る住宅や商店には、当時の社会的背景や人々の暮らしぶりが色濃く残されており、まさに“歴史の生き証人”といえます。
江戸、明治、大正、昭和、それぞれの時代の特徴を映す建築物。その歴史的・文化的価値について、探検隊の3人が学んできました!

今回の取材の裏側をこちらの動画でご覧いただけます。
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どんな建築物と出会えるのか。広大な園内へGO!

ということで3人が訪れたのは、東京都小金井市にある野外博物館「江戸東京たてもの園」。東京都内の歴史的建築物を園内に移築し、復元・展示しています。展示物は30棟もあるそう。
本日はあいにくの雨模様ですが、好奇心あふれる3人にそんなことは関係ありません。さっそく行ってみましょう!

学芸員の高橋さんのご案内のもと、見学をスタート。
飯塚隊員「よろしくお願いします! ここには、都内にあったいろんな建築物が展示されているそうですが」
高橋さん
「はい。昔から東京には歴史的価値のあるおもしろい建物がたくさんあったのですが、バブル期の土地開発などによって多くが壊されてしまいました。それらを残していくために、園内に移築して保存しています」
角田隊員「素朴な疑問なんですけど、そんなでっかいものをどうやって移築するんですか?土地ごとごっそりとか?」
高橋さん
「ひとつひとつ解体、ですね。その時に建材を調査して、腐敗している部分は付け替えたりとか」
飯塚隊員「うへー、大変な作業ですね」
高橋さん
「そうですね。お金も時間も手間もかかりますが、そこまでして残していく価値があると思います。これから園内の展示物をご覧になれば、その意味がお分かりいただけるかと」
東西に細長い敷地内は、時代も様式も異なる建築物が点在するちょっと不思議な空間。

高橋さん
「さまざまな民族の文化が入り交じる世界の大陸の国々では、民族のルーツやアイデンティティを大切にします。ですので、道具や家など昔の人々の暮らしの跡を展示する野外博物館は、海外ではとても重要視されているんですよ」
飯塚隊員「へー、そうなんだ。日本だと、民族っていう意識はあまり強くないかもね」

高橋さんに導かれて、園内の最西エリアに到着。江戸時代の茅葺き民家が建ち並んでいます。まずは江戸の建築物から見ていきましょう。
高橋さん
「ここは三鷹市に建っていた“吉野家”。江戸時代後期の農家です」
豊本隊員「え?ホンモノ!?」
高橋さん
「木造なのでどうしても傷んでしまうので補修はしていますが、柱や小屋組みなどは当時のまま残っています。」
飯塚隊員「へー、すごい。でも、かなり広くない? 部屋もいくつもあるよ。当時の農家さんってこんなに大きな家で生活してたの?」
高橋さん
「いえ、吉野家は農家のなかでも上流階級だったようです。村の名主ですね」
角田隊員「だよねー。そりゃ、これだけ広いもんね」
高橋さん
「上流階級の農家ならではの様式が見られるのも、この建物のひとつの特徴なんです。ちょっとこちらへ」

来客用に設けられた式台付きの玄関


そう高橋さんに案内され、3人は一度外に出て、農家の西側へと回ります。
豊本隊員「なんですか、これ?」
高橋さん
「玄関です」
角田隊員「いや、玄関ならさっき入ってきたところにあったじゃない? 上流階級になると、玄関を2つ持つのも当たり前だったの?」
高橋さん
「昔の三鷹市は、将軍が鷹狩りを楽しむ幕府の“鷹場”で、吉野家は休憩処として利用されていました。この玄関は、将軍やその取り巻きの地位の高い人たち用のものです。家の人は使用していません」
飯塚隊員「つまり、偉い人しか通っちゃいけない玄関ってことですよね。昔はこんなものもあったんだ。でも地味っちゃ、地味だよね(笑)」
高橋さん
「まあ、当時の農家では、豪華なモノを作ること自体が禁止されていましたので」
豊本隊員「なるほど。建物の造りには、そういった社会的背景も影響しているのか。おもしろいねー」

こちらは、囲炉裏が備わった勝手(台所)スペース。昭和30年代の農家の生活が再現されています。
高橋さん
「住居はあくまで人が住む場所なので、どんどん改修されていくんですよね。なので、タンスなどの調度品も昭和のものになっています」
角田隊員「最近買ったやつってことか」
飯塚隊員「最近っていっても昭和だぞ(笑)」
豊本隊員「まあ、暮らす人にとっては当たり前のことだよね」

高橋さん
「座り方にも順列がありまして。一番奥がお父さん、水場に近いところがお母さん、土間に近いところが子どもたちといった感じだったようです」
角田隊員「じゃあ将軍さまは?」
高橋さん
「将軍はこちらには来ていないと思いますよ(笑)」
豊本隊員「昭和の中期でも、農家さんの暮らしはこんな感じだったんだね」

西洋の文化を受けて、モダンに進化していく建築様式


時代を下り、続いては大正時代の建物「小出邸」へと足を運びます。
江戸時代に長く続いた鎖国が終わり、大きな転換期を迎えた明治時代。
日本に流れ込んできた西洋の文化は、大正に入ると一般住宅にも反映されるようになりました。「小出邸」はその当時の建築様式を象徴する貴重な建物です。

豊本隊員「当たり前だけど、さっきの農家とは全然違うね。モダンな印象」
高橋さん
「堀口捨巳すてみさんという建築家が大正14年に建てた邸宅です。ヨーロッパへ建築留学に行かれて、その頃に強く影響を受けたオランダの住宅デザインが投影されています」
角田隊員「なるほど。閉鎖的だった江戸時代を経て、国際化への道を歩み始めた、というわけだ」
急にカッコイイことを言いだす角田隊員。

玄関ポーチにあしらわれた幾何学的な円形デザインにも、洋風文化の影響が感じられますね。
貴重な建築物を前に、ややテンション上がりぎみな角田隊員。

飯塚隊員「お邪魔しまーす」
内部は一見すると和の装いですが、応接間はアンティークな家具が備わる洋風の空間。
飯塚隊員「お、ピアノも置いてある。いいお宅だなー」
高橋さん
「日本の伝統に西洋の文化を融合させた和洋折衷のスタイルは、明治~大正期に生まれた文化。ところどころに水平線や垂直線を意識した空間構成がなされていますが、それも西洋で流行ったデザインを取り込んだものです」

飯塚隊員「隣の部屋は和風だね。確かに和洋折衷だ」
高橋さん「ここは寝室ですね。ただ、ディテールの部分には西洋から影響を受けたデザインを見ることができます。例えば、この戸棚とか」
角田隊員「ん? 上と下、右と左で棚の大きさが非対称になってるのかな」
高橋さん
「そう。単純に均一化するのではなく、あえてアシンメトリーにしたデザインになっています」
飯塚隊員「へー、細かいところまでおしゃれだねー」
高橋さんの説明を受けながら見学していると、まるで建物そのものが当時の様子を物語っているように感じられます。これも古い建築物の魅力のひとつでしょう。

時代が進むにつれ、日本の建築様式はどんどん多様化していきます。
戦前期には、水平線と垂直線の対比を強調したモダンなデザインが流行しました。そのひとつが、小出邸の向かいに展示されている昭和12年築の「常盤台写真場」。文化住宅が並んでいた板橋区常盤台の住宅街でも、一際目立つ存在だったそうです。
豊本隊員「なんか、全体的にシュッとしてるな。無駄がないというか」

1階がお店の人の住居スペース、2階は、天井が高くとられた昭和の頃の写真場(スタジオ)になっています。デジタルカメラなどない時代、結婚式や七五三など、特別な日のための写真撮影に利用されていました。
飯塚隊員「今はカメラひとつで撮れちゃうもんね。時代を感じるな~」

高橋さん
「当時は照明設備が整っていなかったので、自然採光で撮影を行っていました。そのため、大きな摺りガラスの窓が北側に設けられています。南側だと時間によって光の入り方が変わってしまうので」
角田隊員「なるほどねー。確かに今もすごく明るいわ。あっ、まぶしい!」
高橋さん
「2階でなおかつ北側には大きな窓を備えるというのが、当時の写真場の特徴ですね」
せっかくなので、建物を出る前に3人揃って記念撮影。ハイ、チーズ。

小出邸と常盤台写真場。どちらもシンプルでありながら洗練された印象を受けました。これには、この時代の建築史を語る上で欠かせない、“モダニズム建築”が関係しているといいます。
角田隊員「モダニズム建築ねー、はいはい。聞いたことあるような、ないような…」
高橋さん
「簡単にいうと、コンクリートや鉄を使い、無駄な装飾などを省いた機能的で合理的な建築物のことです。19世紀の産業革命後に誕生し、世界の建築様式に大きな変化をもたらしました。小出邸や常盤台写真場で見られた直線を意識した空間造りも、少なからずモダニズム建築の影響を受けたものです」
飯塚隊員「でも、どちらも木造でしたよね?」
高橋さん
「はい。戦前や戦時中の日本は資材が不足していて、コンクリートや鉄を使った建築は難しかったんです。なので日本の建築家たちは、木造によるモダニズムの表現を試みました」
通称“木造モダニズム”とも呼ばれる、日本のモダニズム建築。そのなかでも傑作と呼ばれる建物が、園内に展示されているそう。さっそく向かってみましょう。




後編に続く。
次回更新は、9月22日(水)を予定しています。
お楽しみに!
◆◆◆

取材協力/江戸東京たてもの園
平成5年に東京都江戸東京博物館の分館としてオープンした野外博物館。現地での保存が不可能になった東京都内の歴史的建築物を約7haの広大な敷地内に移築し、復元・保存・展示している。30棟の建築物のほか、実際に都内を走っていた都電や上野消防署の望楼などの屋外展示物も見ることができる。ミュージアムショップも併設。
DATA

住所/東京都小金井市桜町3-7-1(都立小金井公園内)
入園料/400円
TEL/042-388-3300
営業時間/9:30~17:30(10~3月は~16:30。入園は閉園30分前まで)
定休日/月曜休(祝日の場合は翌日休)
江戸東京たてもの園公式サイト
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