真 東京03探検隊 江戸東京たてもの園 「時代を映す建築物の、歴史的・文化的価値にふれる」(後編)

2021年9月22日 09時50分

お笑いトリオ“東京03”が、大人の好奇心を満たすディープな世界に飛び込む!


お笑いトリオ「東京03」のメンバーが、これまで知らなかった未知なる世界に足を踏み入れ、さまざまな新発見と出合う人気の連載。
考古学、芸術、科学、サブカルなど、あらゆる分野に触れて見聞を広め、“デキる大人”としてのたしなみを磨きます!
今回のテーマは「建築物」です。時代の流れとともに変化し、西洋の文化を取り入れながら発展してきた日本の建築史。古い住宅や商店には、当時の社会的背景や人々の暮らしぶりが色濃く残されており、まさに“歴史の生き証人”といえます。
江戸、明治、大正、昭和、それぞれの時代の特徴を映す建築物。その歴史的・文化的価値について、探検隊の3人が学んできました!今回は、その後編です。

偉人とゆかりある2つの木造建築を見学

3人がやってきたのは、シンメトリーの外観が美しい瀟洒しょうしゃな邸宅。これが“木造モダニズム”の傑作と呼ばれる建物「前川國男邸」で、園内でも特に人気の高い展示物だそうです。
高橋さん
「日本のモダニズム建築の巨匠と呼ばれる前川國男さんの自邸。前川さんご自身が設計を手掛けました」
豊本隊員「へー。建築家が、自分が住むために建てた家ってことか。確かに、ほかとはちょっと違う雰囲気があるね」

内部は吹き抜けの居間を中心に、それをはさむように寝室と書斎が置かれた間取り。木の温もりを感じられる空間にはロフトも備わり、まるで避暑地の別荘のようです。
角田隊員「おー! これは見事だね。住みたい!!」
高橋さん
「この建物の凄いところは、第二次世界大戦中に建てられたということ。資材が不足し、戦時体制下で延床面積も制限されているなかで、さまざまな工夫を凝らして豊かな空間を創り出しています」

ロフトから見下ろすとこんな感じ。
三角屋根の建物中央のもっとも高い部分を吹抜けにし、天井の低い両端は寝室と書斎とすることで空間を有効に活用。
窓のレール部分には金属の代わりに木材を使用し、そのほか90度回転する戸袋や、ロフト側面に付けられたディスプレイ棚など、希代の建築家らしい斬新かつ機能的な設えが随所にちりばめられています。
飯塚隊員「いやー、さすが建築家の発想だよね。これだけ天井が高いならさ、普通は2階を作ろうって思うじゃない?」
高橋さん
「そうですね。世界的建築家が手がけた邸宅ということで、建築学科の学生さんが見学に来ることも多いです。大学の先生から“一度見てこい”って感じで(笑)」

角田隊員「ここに決めちゃおうかなー。でも、さっき見たところも捨てがたい…」
豊本隊員「お値段はこちらの方がお高くなっております」
角田他員「うわー、やっぱりそうだよねー。悩むわー」
どうやら、新居の内見のコントをしているようですね…。楽しそうです。
ここまで、江戸から昭和にかけての建築物を見てきた3人。
飯塚隊員「時代が進むについて、建物の造りやデザインもどんどん多様化していったんだね。江戸時代の農家や民家だと、貧富の差はあっても間取りとかはだいだい似通っているもんね」
豊本隊員「やっぱり、外国からの影響が大きかったんじゃない?」
高橋さん
「そうですね。建築に対する見聞が広がったことは、日本の建築を大きく発展させたかと。ただ、それによって伝統的な日本の和風建築が忘れられたわけではなく、むしろ、洋風建築を学ぶことで和の魅力を再確認し、より洗練された建築様式へと昇華されました。例えばこの建物とか」

そういって高橋さんが指したのは、貫禄のある木造の和風邸宅。
高橋さん
「第20代内閣総理大臣も務めた政治家・高橋是清これきよさんの邸宅です。明治35年築で、主屋の部分を移築したものですね」
飯塚隊員「ほー、著名建築家の次は総理大臣ですか。すごい建物が次から次へと出てきますね(笑)」

ギシギシと軋む階段を上り、2階へ。
飯塚隊員「ここは純和風、って感じですね」
高橋さん
「本来あるべき柱を抜いたり、柱の間隔を大きくすることで開放的な空間になっています。昔と比べて合理的な構造になっているのは、近代の和風建築の特質のひとつです」
豊本隊員「へー、合理性を求めたのはモダニズム建築の影響もあったのかな?」

明治から大正にかけて、激動の時代を生きた高橋是清氏。昭和11年の「2・26事件」で国家改造を唱える兵士らによって暗殺され、波乱に満ちた82年の生涯に幕を閉じました。
その現場となったのが、探検隊の3人が今立っている2階の寝室だそうです。
高橋さん
「2階のどの部屋が寝室として使われていたのかは分かっていないんですけど。就寝中に襲撃にあったそうです」
豊本隊員「ここでか…。恐ろしいな…。よく移築できましたね」
飯塚隊員「でも襲撃したほうも怖かったんじゃないかな? いや、想像もつかないけどさ」
高橋さん
「どうでしょうね。その時代の勢いというのもあったと思います」

下町の看板建築を見たあとは、銭湯でひとっ風呂?

高橋さん
「ここまで住まいとしての建築物をいくつか見ていただきましたが、いかがでしたか」

飯塚隊員「いやー、家ってやっぱり人が毎日暮らす場所なわけだから、各時代ごとの生活様式とか流行とかが、いろいろしっかり残っているものなんだなーと」
角田隊員「うんうん。これからは古い建物に対する見方が少し変わる気がする」

高橋さん
「そう思っていただけて良かったです。では最後に、東京の下町をのぞいてみましょう」
そういって案内されたのが、園内の一番東側のエリア。なにやら、レトロな建物がいくつも並んでいますね。
高橋さん
「ここには昭和初期の商店や居酒屋などを移築して、東京の下町の風情を再現しています」
角田隊員「テーマパークに来たみたいだ。てか、園内広っ!!まだこんな場所があったとは」

飯塚隊員「なんだか、おしゃれな装飾の建物が多いね」
高橋さん
「お、いいところに気付かれましたね。これらは、大正12年の関東大震災以降に東京の町に建てられた商店建築の特徴なんです」
豊本隊員「え? なんで震災後なの?」
高橋さん
「震災では、火災によって多くの木造の建物が焼失してしまいました。その教訓を生かし、銅板やタイルを外側に貼りつけた、火災に強い建物を建てるようになります」
角田隊員「ふむふむ」
高橋さん
「しかし、ただ銅板を貼るだけじゃ味気がない。ということで、いろいろ細工をするようになりました。例えば、あの商店のガラス欄間の上を見てください」

飯塚隊員「あー、半円が波みたいにずっと横に続いてるね」
高橋さん
「“青海波せいがいは”と呼ばれる、江戸小紋の紋様のひとつです。銅板を連続して組み合わせることで表現しています」

さらに花屋さんの2階窓下には、四季折々の花のレリーフを発見。
高橋さん
「このように震災以降の商店のファサード(正面部)には、さまざまな紋様やレリーフがあしらわれました。正面が看板のように平坦であることから、“看板建築”とも呼ばれています」
飯塚隊員「なるほどねー。細部にまでこだわるのは粋ってやつだね」
ほかにも下町エリアには、興味深い建物がいっぱいです。
こちらは、筆や墨などの卸売を行っていた「武居三省堂」。昔の文具店ですね。
角田隊員「左右の壁が、棚箱だらけだ。天井にも収納箱みたいなものがあるし…。すごい収納好きだったのかな」
高橋さん
「間口がせまく、奥行きがある造りも看板建築の特徴。限られた空間をうまく利用して能率的に商品を収納するための工夫ですね」

こちらは、和傘の問屋「川野商店」。看板建築よりも古い、大正15年築のものです。
高橋さん
「ここにはなんと、電話ボックスがあるんですよ」
飯塚隊員「なぜ、和傘のお店に電話ボックス?(笑)」
高橋さん
「当時は、まだまだ一般家庭には電話は普及していなかったので。 “誰々さん呼んできてよ”とか、近所の人との電話交換の役割をしていたようです」
そして下町エリアの一番奥にどっしり構えているのは、なんと銭湯!
昭和4年に建てられた「子宝湯」は、足立区の千住元町に建っていました。
角田隊員「よっしゃ、ひとっ風呂浴びるかー!」
飯塚隊員「いや、できるわけないだろ(笑)」
豊本隊員「なんか、お寺みたいだな」
高橋さん
「こういった寺社建築を思わせるような装飾は、“東京型銭湯”ってよくいわれます。今、都内にある銭湯もこのような外観のところが多いですよ」

豊本隊員「やっぱり、銭湯のペンキ絵といったら富士山なんだなー」
角田隊員「いやー、建物めぐりは楽しかったけど、雨降ってたし疲れたね。よし、お湯張ってもらおう!」
飯塚隊員「だから無理だって(笑)」
これにて、建物めぐりは終了!
各時代の文化や建築様式、当時の人々の暮らしぶりなど、貴重な情報が刻まれた建築物は、それぞれが独自の物語を持っているもの。これから先の時代にもずっと残していきたいですね。探検隊の3人にとっても、非常に貴重な体験になりました。
ご案内いただいた高橋さん、そして江戸東京たてもの園のみなさん、雨の中ご協力ありがとうございました!

江戸東京たてもの園
「時代を映す建築物の、歴史的・文化的価値にふれる」
(前編)はこちら。
◆◆◆
取材協力/江戸東京たてもの園
平成5年に東京都江戸東京博物館の分館としてオープンした野外博物館。現地での保存が不可能になった東京都内の歴史的建築物を約7haの広大な敷地内に移築し、復元・保存・展示している。30棟の建築物のほか、実際に都内を走っていた都電や上野消防署の望楼などの屋外展示物も見ることができる。ミュージアムショップも併設。
DATA
住所/東京都小金井市桜町3-7-1(都立小金井公園内)
入園料/400円
TEL/042-388-3300
営業時間/9:30~17:30(10~3月は~16:30。入園は閉園30分前まで)
定休日/月曜休(祝日の場合は翌日休)
江戸東京たてもの園公式サイト
※新型コロナウィルス感染症の影響で、掲載したお店や施設の臨時休業および、営業時間などが変更になる場合がございます。事前にご確認ください。
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