<新型コロナ>「亡くなるべくして亡くなっている」 一家感染の50代夫婦、支援体制の不備や自宅療養の苦しさ激白

2021年8月29日 22時19分
 家族3人全員が感染し、自宅とホテルに分かれて療養を経験した神奈川県内の50代夫婦が、本紙の取材に応じた。県が緊急連絡先として広報している電話番号にかけても具体的な対応はなく、不安な日々が続いた。支援態勢の脆弱さに「自分の命は自分で守るしかないと思った」と振り返る。(石原真樹)

妻の日記。息苦しさに「死ぬんじゃないか」との不安と、医師の往診後に「負けない!」との前向きな思いがつづられている(一部画像処理)

◆神奈川県の専用ダイヤル折り返しなし

 最初に感染が判明したのは夫。7月末に発熱し、検査で陽性反応が出た。基礎疾患はあったが、保健所の電話での聞き取りで軽症と判断されてホテル療養に。夫がホテルに移った翌日に20代の娘が発症し、数日後の検査で妻も陽性になった。娘は夫と同じホテルに入り、妻は飼い犬の世話のため自宅療養を選んだ。
 夫は夜中に40度の発熱が続くなどしたため、ホテルに常駐する看護師に相談。オンライン診療を受ける必要があると判断された。療養者をサポートする県の専用ダイヤルに電話したところ「折り返します」と言われたが、折り返しはなし。仕方なくネットで市販薬を注文した。
 妻は発症10日目くらいに熱が39度台に。解熱剤は効かず、血中酸素飽和度は94%まで低下した。「息ができないのがつらかった。死ぬかも、と思った」。ホテル療養を終えていた夫が緊急時の連絡先とされる県の「コロナ119番」に連絡。しかし、返事は「折り返せるか分からない」。夫は「119番をうたっているのに。感染者のバックアップ態勢はないんだなと心細くなった」と振り返る。
 地元の病院で診察を受けると、エックス線で肺の下部に影があり、中等症1くらいだろうと診断された。しかし、保健所かコロナ119番を通さないと薬を処方できないと言われ、自宅に戻るしかなかった。
 この日、妻が地元医師会と看護師による療養サポートの対象になり、夜に医師の往診を受けることができ、妻は「命がつながった」とほっとしたという。その場でステロイドを処方され、翌日から熱が下がった。

◆電話口の咳にAIが「聞き取れない」とだけ…

 県などの支援態勢の不備を感じる場面は他にも。妻の症状が悪化したのは、通常の療養期間が終わる発症10日目ごろ。しかし県から療養期間を延長するかどうか連絡はなく、自宅療養者用の配食は途絶えた。夫が県に問い合わせても「分からない」、保健所には「県に聞いて」と、たらい回しにされた。妻は「知らない間にケアが打ち切られるのか」と思ったという。
 県がLINEと人工知能(AI)の電話で行っている療養者の症状確認も気になる点があった。妻はLINEで「息苦しい」と回答した日、電話がかかってきたが、息苦しさのためせき込みながら答えると「聞き取りできませんでした」とAI。その後も、人による確認の電話はなかった。
 「感染した人の不安がなくなるように協力したい」と取材に応じた夫婦。夫は「県は療養者の症状を毎日把握しているとするが、連絡しても折り返しが来ない状況では、自宅などで療養中に亡くなるのは亡くなるべくして、だと思う。ひとり暮らしだと本当に不安になるのでは」と思いやる。

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