ファッション業界をサステナブルに リメイクデザイナーを突き動かした「忘れられない光景」

2021年8月30日 08時00分

リメイクした古着を紹介する新宮夏海さん

 リメイクブランド「SHINPIN」のデザイナー新宮夏海さん(26)には忘れられない光景がある。ルームウエアの人気店で働いていた時、売れ残った新作が店のバックヤードで山のように積まれていた。ファッション業界は大量廃棄の問題に直面している。「私が一から作る意味ってあるのかな」。ファッションデザイナーになろうとしていた自分の胸に手を当てた。

◆服作りは楽しい…でもなんか違う

 服を作るのは楽しい。でも生地を裁断して一から作るのは感覚的になんか違う。行き着いたのが古着だった。誰かが着なくなった服や、捨てられかけていた布の切れ端。それらをつなぎ合わせて全く新しい1着に変身させる。そこに光を見いだした。「今はずっと楽しい」。山積みの新作と対面した時の迷いは消えた。
 東京都葛飾区に自宅兼アトリエを構え、材料の仕入れから制作、販売までを全て1人で手掛ける。スマートフォンが1台あればネット上に自分の店を開ける時代。「朝から夜まであっという間」と黙々と制作に打ち込み、商品が出来上がったら写真に撮ってInstagramで紹介する。ミシンにスマホに、作業の手は一日中止まらない。

SHINPINのオンラインショップ

◆ムエタイの短パンもおしゃれな1着に

 制作で得意とするのが、色や素材が異なる生地の掛け合わせだ。絵柄が個性的な中国産タペストリーや、タイの国技ムエタイの選手が試合で履いていた色鮮やかな短パンのように、癖がある生地もバランス良く取り入れることができる。出会うことがなかったであろう生地同士が1着の服として融合する。古着ならではの面白さだ。
 茨城県から上京し、歴史ある文化服装学院(渋谷区)の服飾科で服作りの基礎から応用まで学んだ。2017年、「古着でも手を加えると新品になる」との思いを込めた自身のブランド「SHINPIN」を立ち上げた。

◆コロナ禍で増えたある依頼

 SNSを起点にして活動の幅を広げ、2020年には若者ファッションの発信拠点でもある渋谷パルコで期間限定の出店を実現。一方、2人組音楽ユニット「グデイ」からも依頼が舞い込み、ライブ用の衣装を提供した。
 コロナ禍で家の片付けをする人が増えた最近は、「着なくなったけど思い入れがあるので」とリメイクを任されることが増えた。「サステナブル」の言葉とともに、物を大切にしようとする理念が世の中に浸透し始めている。活動の幅はまだまだ広がっていきそうだ。(加藤健太)

衣服の大量消費 環境省によると、この30年間、供給量が増える一方で1枚あたりの価格は6848円から3202円と安くなった。着なくなった衣服は約7割がごみに出されており、大量生産の後に大量廃棄される傾向が強まっている。


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