<社説>デジタル庁 問題残る見切り発車だ

2021年8月30日 07時31分
 菅義偉首相が力を入れるデジタル庁=写真、同庁が入る東京都千代田区内のビル=が九月一日に発足する。デジタル情報網を一元化し、行政の効率化を図ることが目的だ。ただ情報管理やトップ人事をめぐる問題が山積しており、官庁として有効に機能するのか疑問を抱かざるを得ない。
 同庁は発足後、システムがバラバラに構築されている公的部門のデジタル情報網をまとめる作業に取り組む。スマートフォンですべての行政手続きを一分以内に完了できるといった効率的システムをつくる計画だ。
 昨年の現金給付の際、デジタル化の軸であるマイナンバーカードの取得率の低さが混乱の一因となった。この件がデジタル化推進の背景にあることは間違いない。
 ただ国民の多くは個人情報をマイナンバーなどで行政に把握されること自体に抵抗を感じている。
 政府も利用する無料通信アプリLINE(ライン)の情報が中国企業で閲覧できた問題に見られるように国の情報管理も甘い。
 高齢者を中心にデジタルが苦手な人々が不利益を被る懸念もある。スマホなどでのワクチン予約に苦戦する高齢者の姿を見ればその懸念はより現実味を帯びる。
 同庁は発足後直ちに、情報保護の強化策や国民を誰一人置き去りにしないための対策を具体的に提示すべきである。
 事務方トップのデジタル監には一橋大名誉教授の石倉洋子氏(72)が内定した。日本学術会議副会長などの公職のほか多くの企業の社外取締役を務めた経済人だ。だが経歴からみてデジタルとの関係が見えにくい。デジタルに向き合うには変化に即応する柔軟さも必要だ。起用の理由を知りたい。
 デジタル関連をめぐっては、東京五輪・パラリンピックで導入した入国管理アプリ開発の入札過程で、担当の内閣官房職員が業者提出の参考見積書を競合他社に見せる不適切行為も指摘された。
 同庁には来年度予算で五千億円超(要求ベース)が投じられる見通しだ。新たな官庁がなぜ必要で、どんな政策を担うのか、菅首相には丁寧な説明を求めたい。

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