温暖化対策に消極的だったロシアが…北極圏で進む脱炭素ステーション計画の思惑は

2021年8月30日 16時00分
 永久凍土の上で持続可能な生活を―。風力や太陽光、水素をエネルギー源にした「国際北極ステーション」の構想がロシアで進んでいる。石炭やガスの輸出で稼いできたロシアが「脱炭素」を世界に訴えるとは、これいかに? (モスクワ・小柳悠志)

風力や水素エネルギーで稼働する国際北極ステーションのイメージ=ロシア極地研提供

 ロシア政府は6月、北極ステーションの建設にゴーサインを出した。来年にも北極圏のヤマロ・ネネツ自治管区で着工、2024年にはステーションの試験利用が始まる見通し。
 コンセプトは二酸化炭素(CO2)を出さない施設。再生可能エネルギーと水素で電気や熱を供給し、蓄電池も活用する。ガス・石炭・石油などの化石燃料は使わない。延べ床面積4500平方メートルのドーム型建物で、国際研究者チーム80人以上が生活する構想だ。

北極ステーションの構想を語るユーリー・ワシリーエフさん=小柳悠志撮影

 北極圏の冬は日照時間も短く、天候も荒れがち。「だからこそ生活は快適でなければ」と語るのはステーション構想の責任者、ロシア極地研究所のユーリー・ワシリーエフさん(42)だ。再生エネと水素だけで稼働する北極圏の施設は世界初といい、水素エネルギー利用の先進国である日本の知見も得たいという。共同研究スペースのほか診療所や図書室、スポーツジムも設置する方針だ。
 ロシアの温室効果ガス排出量は世界4位。化石燃料の収入は財政の屋台骨で、温暖化対策には消極的と言われてきた。今年に入り、急ピッチで進む北極ステーション構想からは「脱炭素」を外交手段にし始めたプーチン大統領の思惑が透けて見える。

スポーツジムなどを備えたステーション内部のイメージ=ロシア極地研提供

 プーチン氏は4月、バイデン米大統領主導で行われた気候変動オンライン首脳会議に出席。6月には国際経済フォーラムで「ロシアが地球環境問題に関心がないという指摘はうそ」と説明、「ロシアの気候変動対策は今後、世界で主導的な役割を果たす」と語った。
 バイデン氏はロシアの強権体制に対して厳しい態度で挑む一方、軍縮や気候変動といった土俵ではロシアを協議に加えようと腐心してきた。ここに目を付けたのがプーチン氏だ。
 政治評論家マカルキン氏は「気候変動問題は、ロシアにとって米欧と対話する重要なチャンネルになった」と米メディアで指摘。カーネギー財団モスクワ・センターの研究者も「ロシアが環境問題に取り組めば、国際社会からの評価も高まる」と分析する。
 来月のロシア下院選では環境政党「緑の選択肢」も参戦する見通し。同党は政権与党「統一ロシア」の補完勢力で、エコロジーに関心の高い有権者の票を集める役割とみられる。

 ロシアと北極圏開発 ロシアを含む北極圏8カ国は北極での開発、環境保護などを協議するフォーラム「北極評議会」を形成し、ロシアはこの春から議長国。ロシア新聞によると国際北極ステーション構想は残る7カ国も賛同。北極圏は温暖化によって海氷の融解が進んでおり、ロシアは領土防衛などを理由に軍備を強化。北極海航路の利用も推進している。

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