「対テロ」の次は「対中」 20年に及んだアフガン戦争、米軍撤退で幕切れ

2021年9月1日 06時00分
 米史上最長の20年に及んだアフガニスタン戦争は30日深夜、米軍の撤退で幕を閉じた。バイデン大統領は泥沼化した戦いに見切りをつけるためにトランプ前政権の方針を継承、対立を深める中国との競争に軸足を移す。日本にも足並みをそろえるよう迫ることになりそうだ。(ワシントン・金杉貴雄、バンコク・岩崎健太朗)

◆復権のタリバンが勝利宣言

米軍撤退後、首都カブールの国際空港に到着したタリバンの戦闘員=AP

 「今夜、20年に及ぶ占領が終わった。この間のジハード(聖戦)、犠牲、苦難を経て、歴史的瞬間を迎えたことを誇りに思う」
 イスラム主義組織タリバンの上級幹部アナス・ハッカニ氏は31日未明、ツイッターの投稿で「勝利宣言」した。米軍が去ったカブール空港にはタリバン部隊が乗り込み、首都の夜空には花火が打ち上げられ、祝砲や歓声が響き渡った。
 バイデン米大統領は30日の声明で、17日間で米国人やアフガン人12万を退避させたと強調したが「敗者」は明らかだった。過激派組織のテロ攻撃と米軍の反撃で、米兵のほか多数のアフガン市民が死亡。100人から200人程度の米国人と最大6万人といわれる米軍協力者のアフガン人とその家族が取り残された。
 80万人以上を派兵して約2500人が戦死、2兆ドル(210兆円)超の戦費を投入した米国。それでもバイデン氏が昨年の大統領選で示した「タリバンやイスラム国(IS)などが再構築できないようにする」目標は達成できなかった。

◆バイデン氏を追い込んだトランプ氏の呪縛

 タリバンの復権は予想以上の早さだったとはいえ、米側は米軍が撤退すればアフガン政府が崩壊しタリバンが全土を掌握する可能性自体は認識していた。それでもバイデン氏が早期撤退に踏み切った理由の一つは、トランプ前大統領による「呪縛」だった。
 トランプ前政権は2020年2月、今年4月末までの米軍撤退を含む和平合意をタリバンと締結。バイデン氏が政権を引き継いだ時、駐留米軍は1万5000人から2500人にまで削減されていた。

バイデン米大統領=AP

 バイデン氏が前政権の和平合意をほごにすれば、縮小した米軍がタリバンの攻撃を受け犠牲者が出る。増派をしても20年続けてきたのと同様、戦争の泥沼の繰り返しになる。大統領選で「永遠の戦争を終わらせる」と公約していたバイデン氏に、呪縛を逃れるすべは無かった。

◆もう1つの懸念「対中」へ

 もう一つの理由は、政権にとって最大の課題である中国との競争に注力するためだ。バイデン氏はアフガン撤退にあたり「中国などとの戦略的競争に焦点を当てる必要がある。これはわれわれの未来を決定する」と力説してきた。経済力をつけた中国が軍事面でも台頭するなか、特に台湾への圧力を強めていることに危機感を募らせる。
 米オクラホマ大のジョシュア・ランディス教授は「対中国は米国の明確な目標だ。アジアや世界で中国とのバランスをとるため、同盟国などとの準備に集中するつもりだ」と指摘する。
 アフガン戦争では日本も自衛隊をインド洋での給油活動に派遣し、「米国の戦争」への貢献が求められた。今後は台湾海峡を巡り、米国との協調が求められそうだ。

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