上智大生殺人事件から25年 遺族の姉、奇跡的に残ったピアスは「妹とつながれる唯一の形見」

2021年9月2日 06時00分

小林順子さんからもらった金色のピアス。姉の熊田亜希子さん「妹とつながれる唯一の形見」=岐阜市内で

 1996年に上智大4年の小林順子さん=当時(21)=が東京都葛飾区の自宅で殺害、放火された事件は、9日で25年となる。3歳上の姉、熊田亜希子さん(50)=岐阜市在住=は、順子さんからもらった金色のピアスを「妹とつながれる唯一の形見」として大切にしてきた。国際ジャーナリストを目指していた順子さんが、ホームステイ中の海外で買ってきてくれたもの。事件当日も身に着けていた。4半世紀をともにし、体の一部のように感じるという。(天田優里)
 96年9月9日。亜希子さんは看護助手として働く都内の病院に出勤した。自宅が火事になったと連絡を受けて帰宅すると、順子さんの姿はなく、知人から「危ない状態で病院に搬送された」と教えられた。

形見のピアスを手に、亡くなった小林順子さんに思いをはせる姉の熊田亜希子さん=岐阜市内で

 警視庁亀有署で話を聞かれていた際、順子さんが亡くなったことを知った。警察の書類に「刃物」という文字が見え、殺人事件に巻き込まれたことが分かり、信じられなかった。「なんでうちが…」。その後、無念の表情を浮かべたまま動かない順子さんと署で対面した。

◆努力家の妹

 姉妹は顔がそっくりだったが「性格は正反対。妹は努力家で頭が良かった」。順子さんの大学の食堂でランチをしたり、亜希子さんが服を貸してあげたりと仲の良い姉妹だった。

事件の3カ月前、家族で箱根を旅行した際の小林順子さん。家族揃っての最後の旅行となった=熊田亜希子さん提供

 順子さんは事件の2日後に米国留学の出発を控え、亜希子さんも結婚が決まり、それぞれ新たな人生を踏み出そうとしていた。「しばらく会えなくなるから」と順子さんお勧めの大学近くのイタリアンの店でランチをし、事件前夜はめったに行かない近所の銭湯に出掛けた。湯船で交わしたたわいのない会話が最後になった。「大学に入って留学もして将来は開けていたはずなのに…自分が代わってあげたかった」
 事件で自宅は全焼した。亜希子さんの部屋の真下が火元でほとんどの持ち物を失った。身に着けていたピアスは奇跡的に被害を免れた。焼け跡から婚約指輪を見つけ出したが、翌年3月の予定だった結婚式は延期に。介護福祉士になる勉強も手に付かなくなった。

◆父は「順子はやり遂げてほしいと思っているよ」

 ある日、父賢二さん(75)から「順子はやり遂げてほしいと思っているよ」と言葉を掛けられた。亜希子さんは背中を押され、資格を取得し、結婚式も挙げた。
 亜希子さんの長女は今年、順子さんと同じ21歳の大学生になった。2人は生まれつき脇腹の同じ位置にあざがあり、「生まれ変わり」と思ったことも。2人の姿が重なり「この年で人生が終わってしまったなんて。妹の人生はすごく短かったんだ」と切なさが込み上げてくるという。
 警察から「犯人はすぐ捕まる」と言われたが、未解決のまま時を刻んだ。「なぜこんなに長く犯人は捕まらないんだろう」。昔と変わらず輝くピアスを手に、亜希子さんはつぶやいた。

 上智大生殺人放火事件 1996年9月9日午後4時半ごろ、東京都葛飾区柴又3の自宅2階に1人でいた上智大4年小林順子さん=当時(21)=が首を刃物で刺されて殺害され、自宅を放火された。警視庁は現場で採取した血液から犯人はA型の男とし、現場のマッチと布団から犯人のものとみられるDNA型を採取している。犯行時間帯に玄関前で身長160センチ前後の不審な男が雨の中、傘をささずに現場を見つめる様子が目撃されている。男は黄土色っぽいコートと黒っぽいズボンを着ていた。情報提供は亀有署=電03(3607)0110。

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