濃厚接触者が追い切れない…保健所多忙で調査縮小 「陽性者見逃しているかも」と専門家

2021年9月3日 06時00分
 保健所が新型コロナウイルス陽性者から行動歴を聞き、濃厚接触者を探す「積極的疫学調査」を縮小する自治体が相次いでいる。感染者や入院待機者が増え、入院調整や健康観察などの業務が逼迫ひっぱくしているためだ。デルタ株はわずかな接触でも感染する恐れがあり、調査縮小によってクラスター(感染者集団)の見逃しを招いたり、無症状者による感染が拡大したりする懸念もある。(大野暢子)

◆都「患者の病状把握が最優先」

 東京都は8月10日、保健所への事務連絡で、積極的疫学調査に関し、高齢者施設や医療機関など関係者の重症化リスクが高い事例を優先することを念頭に、事実上の縮小となる「効率的な実施」を呼び掛けた。
 都感染症対策部防疫・情報管理課のカエベタ亜矢課長は「患者の病状把握を最優先に行うため」と説明。必要な調査は今後も行うとしたが、原則として発症前14日間を対象とする行動歴調査に関して「感染者一人一人から、30分間かけて2週間の記憶を聞き出すのは難しい」とも語った。
 埼玉県も同月6日、濃厚接触者の調査対象を家族など同居する人に絞り込んだ。2週間前にさかのぼって調べていた行動歴も2日前までに変更した。感染症対策課の担当者は「職場での接触は調べられていない状態。感染を見逃さないよう、企業単位での検査強化をお願いしている」と話す。
 同様の動きは神戸市や那覇市などでも見られる。

◆少ない無症状者「必要な検査ができていない」

 積極的疫学調査の限界が既に指標に表れているとの見方もある。厚生労働省の診療の手引によると、すべての陽性者のうち症状が出ない感染者の割合は30%前後と推計されている。しかし、最近の都内の無症状者は10%台にとどまり、検査が追いついていない可能性があるためだ。
 厚労省にコロナ対策を助言する専門家組織座長の脇田隆字・国立感染症研究所長は「陽性者の見逃しが起きている可能性がある」と指摘する。
 西武学園医学技術専門学校東京校の中原英臣校長(感染症学)は「必要な検査ができていない中では、今の感染者数も実態を表しているとは言えず、信頼できる数字ではない」と話し、実際の感染者はもっと多いと推測する。
 政府はワクチン接種の進展により重症や死亡に至る確率が低くなっているとして、現在の緊急事態宣言の期限となる12日を目標に、新規感染者数を重視してきた発令・解除基準の見直しを検討しているが、中原氏は「拙速な議論だ」と疑問視する。

PR情報

東京の新着

記事一覧