過信は禁物! 運転免許の自主返納は進んだが、高齢ドライバーの事故件数は高止まり 

2021年9月2日 22時22分
 東京・池袋の暴走事故をきっかけに、高齢ドライバーの事故対策の重要性が認識され、運転免許の自主返納が進んだ。だが、高齢者による死亡事故件数は依然高い水準が続く。

◆昨年、高齢者による死亡事故は333件

 警察庁によると、事故が起きた2019年、免許の自主返納件数は前年より約18万件増え、過去最多の60万1022件になった。20年は55万2381件で、75歳以上が半数以上を占めた。公共交通機関の料金割引など、返納を後押しする制度も全国で進んでいる。
 ただ、20年に全国で75歳以上のドライバーが起こした死亡事故は333件。前年より68件減り、03年以来17年ぶりに400件を下回ったが、全体に占める割合は13・8%で、統計の残る1986年以降で3番目に高かった。死亡事故はこの10年でほぼ半減したが、高齢ドライバーの事故は高止まりの状態だ。公共交通機関が整備されていない過疎地域では高齢者が運転せざるを得ない状況もある。

◆自らの運転を過信せずトレーニングを

 悲劇を繰り返さぬためにどうすればいか。高齢者の注意点として、高齢者安全運転診断センターの事務局長で、高齢者200人以上の車に同乗し運転を分析した橘則光さんは「一般的に、高齢者は運転に過信がある」と語る。長年無事に運転したと自信を持つ人にも心配な点があるという。
 交通事故総合分析センターの特別研究員小菅英恵さんは、自分の運転の客観的なチェックを呼び掛ける。行政の高齢者向け交通安全教室などもある。小菅さんは「自分は何歳ごろまで運転するのかを事前に計画し、それまで安全に運転し続けられるように、日ごろからチェックし、トレーニングしてほしい」と促す。(山田雄之、福岡範行)

◆危険に気づかぬ本人にはヒヤリ・ハットじゃない

 飯塚幸三被告は公判中、運転能力に「問題ない」とし、「過失はない」と言い切っていた。ただ、専門家は、自分の運転を過信しがちなことが一般的な高齢者の課題と強調。高齢者が自分の衰えを自覚できず、危険な場面に気づきにくくなっていることが、事故につながると指摘した。
 高齢者安全運転診断センターの事務局長橘則光さんは、運転に自信を持つ高齢者の心配な例を挙げる。例えば、脇道からの左折で出合い頭でぶつかりそうになり、相手が急ブレーキをかけた場面。事故になりかけたが、加齢で視力などが衰え、相手の急ブレーキに助けられたこと自体に気づけない。「本人にとってはヒヤリ・ハット体験にならない」

◆受講高齢者の9割は運転に「自信あり」

 交通事故総合分析センターの1月の報告書によると、千葉県内で高齢者講習を受けた75歳以上の9割近くが運転に「自信あり」と答えた。認知機能検査で記憶力、判断力が少し低下と判定された人たちの方が、心配ないとされた人たちより自信がある傾向も分かった。一方、「反応の遅れ・し忘れ」など不安全な運転の大半は加齢で生じやすかった。
 橘さんのセンターでは池袋事故後に運転の診断依頼が増えたが、多くは高齢者本人ではなく家族から。最近は、ミラーの確認不足の指摘に「車にセンサーが付いているから」と返す高齢者も目立つという。橘さんは生活に車が必要な事情や老いを認めたくない心情に配慮しつつ「車の機能はあくまでサポート。最終責任はドライバーにある」と語った。(福岡範行)

おすすめ情報

社会の新着

記事一覧