一手の差で勝ち、一手の差で敗れる。将棋の世界は厳しい。<人…

2021年9月3日 07時02分
 一手の差で勝ち、一手の差で敗れる。将棋の世界は厳しい。<人生というのは、一手違いだと考えている>。その世界に身を置いてきた昭和の名棋士、升田幸三は、人生そのものを重ねている(著書『勝負』)▼ウイルスの側が一手先行し、いつも人は劣勢に立たされ続けている。そんなふうに思えるが、どうだろう。新型コロナウイルスと人類の戦いである▼厚生労働省が「ミュー株」を空港検疫で確認したと明らかにした。南米などで広がっていて、世界保健機関(WHO)が先月末、「注目すべき変異株」に分類したばかりの株であるという。欧州メディアによると、ワクチンの効果が弱くなるのではないかという懸念があるそうだ▼デルタ株には押され、ラムダ株も空港検疫で確認された。一手先んじる番になかなかなれない中、わが国では広がっていないとはいえ、また新たな手を敵に指されたようでいやになる▼WHOの分類では、アルファからベータ、ガンマ、デルタが「懸念される変異株」であり、ミューはイオタやカッパ、ラムダなどとともにひとつ下位のくくりに入る。一段下なのはいいが、やっかいなのは次々に繰り出してくる敵の手数である▼升田によれば、一手違いが重大な人生で、大成するのは駒使いのうまい人という。ワクチンに異物が見つかった。大切な持ち駒に、不安が生じてはならない時である。

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